フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、死刑制度を復活させ、毎日、犯罪者たちを「5、6人」処刑するなどと語ったことについて、同国のカトリック教会の指導者たちと慈善団体は「非常に残忍」だと非難した。
AFP通信によると、ドゥテルテ氏は、国民の大多数をカトリック信徒が占める同国で、犯罪に対する容赦ない「戦争」の一部として、死刑制度復活を自身の法律制定の最優先事項に掲げている。主に麻薬撲滅をうたうこの「戦争」では、ドゥテルテ政権発足後、これまでに5300人余りが殺害されたと推計されている。
ドゥテルテ氏は17日、「以前は死刑がありましたが、何も起こりませんでした。死刑制度を元に戻してください。私は毎日(犯罪者たち)5、6人を死刑にするでしょう。本当にそうするつもりです」と述べた。
これに対し、フィリピン・カトリック司教協議会のジェローム・セシラーノ広報長官は同通信に対し、カトリック教会はドゥテルテ氏の計画に「完全に反対」だと語った。セシラーノ氏は、「フィリピンは非常に残忍な国だと見なされるでしょう」と述べ、「死刑制度復活は、フィリピンを世界の中での死刑の中心地とするでしょう」と語った。
フィリピンは、人口の8割が属するカトリック教会が強く反対したことで、2006年に死刑制度を廃止した。
ドゥテルテ氏は、今年6月に大統領に就任する前、絞首刑による死刑を導入することを公約していた。銃殺刑で銃弾を浪費することは望まないとし、脊髄を折ることは銃殺よりも苦痛を最小限にし、より人道的だと考えるとコメント。また、死刑を犯罪防止の手段としては見ておらず、復讐(ふくしゅう)のためだなどと述べていた。
死刑制度復活をめぐっては、来年1月にもフィリピン国会下院で決議が行われる見通しとなっている。
国連のゼイド・ラアド・アル・フセイン人権高等弁務官は今月、フィリピン国会へ宛てた書簡の中で、死刑制度復活はフィリピンの国際的な義務に違反することになると述べた。
それにもかかわらず、ドゥテルテ氏は17日、死刑が国を「破壊している」麻薬の惨事と戦うために必要だと強く主張。ドゥテルテ氏の側近は、感情を刺激する同氏の発言を誇張的な表現に過ぎないとして、片付けようとしたが、人権擁護者たちはドゥテルテ氏のコメントに驚きと警戒感を表明した。
アムネスティ・インターナショナル・フィリピンのロメオ・カバルデ副会長は、同通信に対し、「処刑の人数を設定することは行き過ぎです。私たちは命について語っているのですから、1人の死も重大な問題なのです」と述べた。
カトリック教会の指導者たちと活動家たちはフィリピン政府に対し、死刑制度を復活させる代わりに、無実の人々を死刑囚監房に送ることになり得る、腐敗し、時間のかかる現在の司法制度を改革するよう呼び掛けた。
セシラーノ氏によると、フィリピンの司教らは、死刑制度復活に反対するよう、国会議員たちを説得することを計画しており、来年1月の国会討論への出席も予定しているという。