欧州各地の難民キャンプに避難しているキリスト教徒らが、イスラム教から改宗したキリスト教徒を狙ったイスラム教徒による迫害に対し、非難の声を上げている。
ハンガリーの首都ブダペストに本部を置く「ボス・ニュース・ライフ」が掲載したキリスト教徒の難民らの証言によると、欧州各地の難民キャンプに避難しているキリスト教徒らは、彼らが受けている被害について非難の声を上げている。あるキリスト教徒のグループは書簡の中で、「私たちはイランから避難してきました。キリスト教徒であるという理由で訴えられ、拷問や投獄、死刑の脅威に度々さらされてきたからです」と述べている。
「私たちが現在収容されているこの場所でも、以前と同じような脅威に直面しています。今はアフガニスタン人のイスラム教徒の手によって、命の危険にさらされています」と、キリスト教徒の難民らは訴えている。
「アフガニスタン人の(イスラム教徒の)難民たちは・・・私たちをイランから来た『イスラム背教者』とか『異端者』などと呼んでいます。彼らは、イスラム教信仰を捨てた私たちが血の目を見るのは当然であり、必要であるとすら考えているのです」
クルド人の教会指導者らも、脅威にさらされている。イラクのクルド人自治区出身のある牧師は、滞在中の難民キャンプを離れない限り、命の危険があることを表明している。この牧師は、イスラム教徒や地元警察に脅迫されていたため、クルド人自治区を去ったという。
「モスクの中でイマム(イスラム教の指導者)たちが、私や父、弟について話しているのを聞きました。キリスト教徒になった私たちについて、彼らは講壇の上でマイクに向かってこう言いました。『やつらはカーフィル(不信心者)だから、死ななければならない』。イスラム教徒である父は、屈辱の思いに満ちていました」と、この牧師は述べた。
「モスクにいた人たちは、私たちが悪者だと聞かされていました。『キリスト教徒はカーフィルだ』と。キリスト教徒は、イスラエルや米国の奴隷なのだと」
オープン・ドアーズなどの国際的なキリスト教迫害監視団体は、欧州全域の難民キャンプにおけるキリスト教徒の待遇について大々的に取り上げている。ドイツ・オープン・ドアーズの10月の報告書によれば、ドイツの難民キャンプでは今年、少なくとも743人のキリスト教徒がイスラム教徒に襲われたことが分かっている。
報告書にはこう記されている。「書面で報告されている事例から、ドイツの難民シェルターにおけるキリスト教徒の難民の状況は、依然として耐え難いものであることが確認されている。少数派であるキリスト教徒は、イスラム教徒の難民やスタッフ(守衛や通訳者、ボランティアなど)に殴られるなどして命の危険にさらされ、宗教的な理由で差別されている」
報告書によれば、既知の迫害事件は「氷山の一角」に過ぎず、報告されていない事例が数多くあることが指摘されている。
「動機が政治的なものであるか、他のものであるかにかかわらず、このような不正の常態化や隠ぺい、乱用は、迫害者の動機を助長し、被害者をますます苦しめると思われる」と報告書は指摘し、キリスト教徒やヤジディ教徒、その他被害の対象となっている少数派を保護する上で、より良い対策を講じるよう難民キャンプ当局に呼び掛けている。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー氏などのキリスト教指導者らは、キリスト教徒が難民キャンプで特殊な危険に遭遇することについて、各国政府が理解を示す必要があることをこれまでも警告してきた。
キリスト教迫害監視団体の国際キリスト教コンサーン(ICC)は昨年、クリスチャンポストに次のように伝えている。「英国などの国々が難民の危機管理を論じている通り、カンタベリー大主教は、難民キャンプのポリシーにキリスト教徒を差別する傾向があることを語ってきた。このポリシーは、難民キャンプにいる人々を受け入れるとしているが、差別や暴力、脅迫を恐れる多くのキリスト教徒は、スンニ派イスラム教徒が大半を占める公営のキャンプには入りたがっていない」