全米の何百ものキリスト教会が、ドナルド・トランプ次期米大統領が不法移民を強制送還するという公約を強行した場合に備え、移民らを保護する準備を進めている。
教会は、当局が移民を強制送還するのを妨げるために、旧約聖書の「聖所」の原則を用いるという。英ガーディアン紙によると、礼拝場所は、米国の規則の下では「慎重に扱うべき場所」とされており、これは旧約聖書の民数記の記述に由来するという。多くのシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)もまた、この抵抗運動に加わる用意をしているという。
米国の移民税関捜査局(ICE)と税関国境警備局(CBP)のガイドラインには、「学校、礼拝場所、病院のような慎重に扱うべき所における実行活動、あるいはそれらに焦点を合わせた実行は、通常、回避されるべきである」と記載されている。
キリスト教の人道的慈善団体「チャーチ・ワールド・サービス」(CWS)は、全米の約400教会が強制送還の危機にさらされている人々を受け入れると見積もっている。
トランプ氏の公約は、ニューヨーク、シカゴ、シアトル、フィラデルフィア、ロサンゼルスを含む約20都市が、強制送還を前提とした移民法令に従うことを拒絶すると発表する事態をもたらした。これらの都市の市長たちは、トランプ氏の当選後、相次いでそれぞれの都市が「聖所の都市」であると宣言した。一方、トランプ氏はその報復として、このような都市への財政的支援を阻止すると発表するなどしている。
トランプ氏は当選後、米CBSのテレビ番組「60ミニッツ」に出演し、「犯罪者、犯罪歴を持つ人々、ギャングのメンバー、麻薬の売人、米国にはこれらの人々がたくさんいます。200万人はいるでしょう。300万人かもしれません。私たちは彼らを国から出て行かせるか、あるいは投獄するのです。しかし、私たちは彼らを私たちの国から出て行かせます。彼らはここに違法に住んでいるのです」と述べている。
聖公会の主教たち数人もまた、トランプ陣営と和解するよりもむしろ、抵抗することを約束している。
バージニア州では、聖公会の主教たちがラテン系米国人に対して、「私たちはあなたがたを支持します。単に象徴的にではなく、もしその時が来るなら、文字通りあなたがたと共に立つためにそこにいるでしょう」と語った。
米国聖公会の代議員会議長であるゲイ・クラーク・ジェニングス氏は、「今、恐れを抱く正当な理由を持つ人々に対して、実に教会がそれ(和解)を提案することは、牧会的に不適切でしょう」と語った。
ジェニングス氏はまた、「トランプ次期大統領の言葉遣いと振る舞いは、かなりの数の他の米国人を彼自身と平等な存在、あるいは十分に人間として見なさないことを示しています」と述べ、トランプ氏の言動を批判した。