ヒューマンライツ・ナウから、アジア地域で活躍する女性活動家に贈られる「アジアン・アクティビスタ」を受賞した日本在住のオーストラリア人キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんが、25日まで久遠キリスト教会(東京都杉並区阿佐谷北)で写真アート展「In Our Hands」を開催している。期間中、ジェーンさん本人が常駐し、作品の説明やレイプ被害者からの相談を受けている。
ジェーンさんは2002年、神奈川県横須賀市で米兵にレイプされた。加害者の米兵は、民事裁判中、米軍の指示により、名誉除隊後、米国へ逃亡し、行方をくらました。1人で米兵を探し出し、米国の裁判所で訴訟を起こし、勝訴判決を受けた。
今回のアート展に展示されている作品は、コラージュ、デザイン画、アート写真など、およそ80点。個展としては、最大のものとなった。写真アート展は、2009年の開催に続いて2回目。
レイプ被害に遭う前は、絵画や写真は好きだったものの、作品を作るまでには至っていなかった。しかし、2002年の事件以降、自らの癒やしのため、またレイプ被害者の声なき声を届けるため、作り始めたのだという。今回の展示には、世界各国からジェーンさんのもとに寄せられるレイプ被害者の作品も数点展示されている。
「被害者の叫びを聞いてほしい!」とジェーンさんは訴える。「レイプ被害者は、数字で表せるものではない。一人一人に人格があり、一人一人に人生や家族がある。それを破壊するのは、魂の殺人だ。悪いのは加害者。被害者に非があるからレイプされるのだという議論は間違っている」と話す。
また、昨今の大学内における強姦事件を受け、「自分を守るための教育は、必要。小さな子どもが母親から歯を守るために歯磨きを習うように、大切な体を守るための教育は、家庭や学校でもするべき。しかし、女性にばかり『レイプされないように気を付けて』と言うのは違う。男性に『レイプは、絶対にしてはいけない』と教育することが大切なのでは」と話した。
激しいPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、心療内科にも通い続けたというジェーンさん。「私は汚れた存在」「私なんて存在価値のない人間だ」と繰り返し考え、地の底を歩いているような気分だった数年間。自分の体に触れられることを極端に怖がり、母親からさえも、体に触れられることに嫌悪感を覚えた。しかし、心の底では、「いつか、この気持ち、この現状を社会に訴えなければ」とずっと考えていたという。当時の作品も、その感情を表すかのように、暗く、不安と恐怖に満ちた様子が感じ取れる。
現在は、全国各地からの講演も多く、講演の冒頭には、「I am Beautiful!」と話すのだという。「私は美しい。私は愛されている。私はとても価値のある女性」と自分自身に言い聞かせている。来年初頭には、24時間のレイプクライシスセンターを設立するべく、活動中だ。「東京オリンピックを4年後に控え、多くの観光客が海外から日本に来ることが予想される。外国人が被害者にも加害者にもなる恐れがある。レイプ被害者のためのセンターを作るのは、『待ったなし』の急務。政府がやらないなら、私がやる!」と話している。
アート写真展初日の今日、これまでの経緯や過去の作品と向き合っているうちに、少々気分が悪くなることもあったが、「私たちは沈黙を破らなければならない!」と自らを奮い立たせた。
「被害者の声を、アートを通して伝えていきたい。今回、久しぶりの展示になったが、今後は要望があれば、全国で開催していきたいと思う。全ては神様の栄光を現すために」とジェーンさんは話す。
展示は25日午後4時まで。入場無料。問い合わせは、メール([email protected])まで。