「地の塩、世の光」をスクール・モットーに掲げ、キリスト教信仰に基づく教育を実践する青山学院大学。授業のある平日の朝、教職員、学生らが集い、30分間「大学礼拝」を行っている。その他にも、特別礼拝として、新入生歓迎礼拝、卒業礼拝、創立記念礼拝やクリスマス礼拝があるなど、年間を通して、礼拝を中心としたキリスト教活動が展開されている。また全学生の必修科目である「キリスト教概論」をはじめとし、その他多数のキリスト教関連の授業があり、礼拝レポートの提出が求められている。
前期、後期の1週間を青山キャンパス、相模原キャンパスともに、「チャペル・ウィーク」と位置づけ、著名なクリスチャンや牧師を招いている。この期間は授業時間を短縮し、礼拝出席が特に奨励されている。「とにかく、礼拝の現場を知ってもらうことが大切」と、森島豊大学宗教主任は言う。10月17日(月)の特別礼拝を取材した。
青山キャンパスでのチャペル・ウィークの礼拝は、初期の青山学院を物心両面で支えたメソジスト教会のジョン・F・ガウチャー牧師を記念して建てられたガウチャー記念礼拝堂で行われる。鐘の音が高らかに響き、荘厳なパイプオルガンの前奏で始まる礼拝には、1限目の授業を終えた学生らが次々に入場し、500人ほど入るという礼拝堂の1階はあっという間に満席になった。
森島大学宗教主任の司式により礼拝が始まり、会衆とともに讃美歌を歌い、この日の聖書箇所「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」(ヨハネ8:32)が朗読された。
壇上に上がったのは、楽器を持った黒ずくめの男性3人。日本はもとより、ロイター通信、AFPなど海外メディアにも取り上げられている牧師ROCKS。メンバー全員が牧師という異色のロックバンドだ。
メンバーの1人、関野和寛牧師(ルーテル東京教会)は、青山学院大学の卒業生でもある。学生時代は、キリスト教概論の単位欲しさに礼拝堂を訪れていたという。
「十数年前、今のお前らと同じように俺も礼拝堂に座っていた。当時付き合っていた恋人とイチャイチャしていたら、宗教主任の先生に『何ふざけているんだ!出て行きなさい!』と怒鳴られた。とても恥ずかしかったけど、俺は彼女と手をつないで、礼拝堂から出て行った。今日、恋人同士でこの礼拝堂に来ているやつら、安心しろ。俺は、そんなちっぽけなことは言わねぇ。どんどんイチャイチャしてくれ。同じように神様は、俺たちを愛してやまず、もっと俺たちとイチャイチャするために、イエス様を十字架にかけられ、罪から救ってくださったんだ!」と語り掛け、会場を沸かせた。
牧師ROCKSの曲は、いわゆるハードロックの分類。伝統的なガウチャー記念礼拝堂に響き渡る激しいドラムやギターの音は、異例中の異例。「こうした礼拝は、皆さん、初めての経験だったのでは」と礼拝後に学生たちに語り掛けた。
曲のサビの部分では、「アーメン、アーメン」が繰り返され、「俺の知ってる青学生は、もっと熱いはずだ!」と煽り、「単位が欲しいやつは叫べ!」「就職したいやつも叫べ!」「今日からここは、『ガウチャー記念礼拝堂』じゃねぇ。『ライブハウス・クラブガウチャー』だ!」と叫んだ。
3曲を熱唱し、「真理は俺たちを自由にする! キリスト教は自由なんだ! 今日、この礼拝堂に来てくれたみんなの中には、どうしようもない悩みを抱えてきているやつもいるだろう。悩みがあるやつは俺のところに来い! 話を聞いてやる。単位が欲しくて、就職がしたくて来たやつがいるのも俺は知ってる。最後にみんなのために祈らせてくれ」と話し、「ここに集まったみんなの上に、これから書くレポートの上に、天からの豊かな祝福がありますように」と祝祷をささげ、礼拝が閉じられた。
学生の1人に話を聞くと、「牧師ROCKSのうわさは聞いたことがあった。しかし、見たのも音楽を聞いたのも初めて。すごくかっこいい。最高に楽しかった」と話した。礼拝の後には、メンバーが写真撮影などに応じ、学生をはじめ、教職員も余韻を楽しんだ。
森島大学宗教主任は、「ゴスペルやダンスが伝道のツールとしてあるように、ロックが福音伝道のツールになるのも『あり』だと思います。学生の心に何か響けば・・・と思います。思えば、ルターの礼拝改革もこのような衝撃を与えた出来事だったかもしれません。今日は、楽しかったですね」とインタビューに応えた。