西アフリカのニジェールで、米国人援助従事者が誘拐される事件が発生した。同国のピート・トンプソン広報官は、誘拐された援助従事者が、宣教団体「ユース・ウィズ・ア・ミッション」(YWAM)の関連団体に所属する宣教師であることを明らかにした。
トンプソン氏が英オンライン新聞「インディペンデント」に語ったところによると、誘拐されたのはジェフ・ウッドキー氏(55)。現地時間14日午後9時ごろ、同国西部の町アバラクの自宅にいたところを襲われた。
「事件では、地元トゥアレグ族の夜警1人と、国家警備隊員1人が殺されました。ウッドキー氏がどこに連れ去られたのかは分かりません。犯行声明を出したグループもまだありません。ウッドキー氏の家族からの情報では、米政府が事件を追っているとのことです」とトンプソン氏は語った。
ウッドキー氏は1992年からニジェールに住んでおり、干ばつや不十分な教育環境、病気などの諸問題に直面する人々を援助するYWAMの関連団体「JEMED」で働いていた。米サンフランシスコの北約430キロにある都市アルケータに拠点を置くレッドウッドコースト宣教学院のウェブサイトには、ウッドキー氏は講師として登録されている。
同ウェブサイトに掲載された経歴には、「ジェフ(ウッドキー氏)は、キリストの福音が伝えられていない人々が多いニジェールで宣教団体を設立し、25年余り携わっている」と書かれている。
JEMEDが15日に発表した声明によると、ウッドキー氏は誘拐された後、砂漠を横切って、ニジェール西部に国境を接するマリの方角へ車で連れていかれたという。ニジェールのモハメド・バズム内相は、「犯人はマリへ向かっている。わが軍は追跡中だ」と語った。
ウッドキー氏の自宅近くに住む複数の住人からは、14日夜遅くに銃声を聞いたという通報があった。アバラクのアーメド・ディロ町長はロイター通信に、バイクに乗った狙撃犯がまず夜警を殺害し、その後トラックが来てウッドキー氏を連れ去ったと語った。バズム内相は、現場いた国家警備隊員も殺害されたとしている。
イスラム過激派の活動が活発で、身代金や政治資金目当ての人質事件が頻発する隣国マリと比べると、ニジェールでの外国人誘拐事件は比較的少ない。
過激派や犯罪組織は、広く無法地帯化しているサハラ砂漠周辺を長期にわたって搾取してきた。マリでは今年、治安がさらに悪化し、過激派の活動が激しくなっている。
ニジェールでは、首都ニアメの北東370キロにあるタウアのホテルで2009年、イスラム過激派による米大使館職員誘拐未遂事件が発生したことはあったが、米国の一般市民が誘拐されることはなかった。
米大使館の広報官によると、今回の事件については調査を行ったが、詳細は確認されていないという。米国務省は、幾つかの報告は受けているが、プライバシー保護法のためコメントはできないとしている。
続報:米クリスチャンポストによると、バズム内相はAFP通信に対し、ウッドキー氏は、麻薬密輸を行っている過激派組織「西アフリカ統一聖戦運動」(MUJWA)に誘拐されたとみられると語った。ウッドキー氏は、ニジェールと国境を接するマリ東部のメナカの方角へ連れ去られたとみられており、メナカはMUJWAの支配下にあるという。