香港の行政長官選挙制度における中国政府の統制に抗議する民主化運動「雨傘運動」を指導した学生リーダーの1人でクリスチャンの黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さん(19)に対して、香港の裁判所は15日の量刑言い渡しで、非合法な集会に参加した罪で80時間の社会奉仕活動を命じた。しかし黄さんは、民主化運動に関わったことを後悔していないと話している。
黄さんは2014年、香港の行政長官選挙制度の民主化を求めるデモで、数千人の学生を動員したとして、7月に有罪判決を受け、最大で禁錮5年を言い渡される可能性があった。
黄さんの他にも、79日に及んだ平和的な座り込みによる抗議集会に関わったとして、羅冠聡(ネイサン・ロー)さん(23)と周永康(アレックス・チョー)さん(25)の2人の学生リーダーにも15日、量刑が言い渡された。
黄さんと羅さんはともに非合法な集会に参加した罪で、それぞれ80時間と120時間の社会奉仕活動を命じられ、周さんは扇動罪で1年の執行猶予付き禁錮3週間が命じられた。
黄さんは量刑が発表された15日、ツイッターに「私は非合法な集会に参加した罪で80時間の社会奉仕活動を命じられましたが、雨傘運動に関わったことに悔いはありません」とコメントした。
クリスチャンの家庭で育った黄さんは昨年、英国クリスチャントゥデイの取材に対して、信仰は正義のために闘う決意を強めてくれたと語っていた。子どもの頃、父親に連れられて香港の貧困地域を訪れたことは、弱者を擁護する強い気持ちにつながったという。
「聖書は正義のために闘うことが必要だと教えています。そして、クリスチャンは社会の塩であり光である責任を担っているのです。私たちは単に社会の中でお金儲けをしたいと思う普通の市民ではなく、世の中でより多くの責任と役割を持つ者なのです」
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)は同日、3人に下された判決は全て、若者の「平和的な表現と集会」に対する権利を侵害するものだとして、判決を取り消すよう要求した。
HRWの中国責任者、ソフィー・リチャードソン氏は、「3人の学生の判決に対する香港当局の態度は、中国当局のやり方にますます似てきています。平和的な抗議活動を指揮するのは犯罪ではありません。3人の学生に対する訴えは取り下げられるべきです」と語った。
HRWは、香港では抗議活動を行う人々の逮捕や起訴がますます多くなっており、その中には、国連自由権規約人権委員会が「基本的人権に対し過度の制限を促すもの」だとして非難している、香港の公安条例の下で行われているものもあるとして、警告している。
公安条例の下では、30人を超えるデモ行進と50人を超える集会をする場合、事前に政府から許可を受けなければならない。
リチャードソン氏は、3人が起訴されたことは、香港における基本的人権の将来を懸念する人々を大いに落胆させることになるだろうと述べた。「香港の未来は、当局が市民権と(市民の)政治的権利を縮小するのではなく、維持していくことにどれだけ力を注いでいくかにかかっているのです」