宗教法人「小牧者訓練会」(国際福音キリスト教会)の牧師、卞在昌(ビュン・ジェーチャン)氏のセクハラやパワハラに関する一連の民事訴訟が6月14日、最高裁がいずれの上告も棄却し、卞氏のセクハラ行為を認めた判決が確定したことで幕を閉じたことを受けて、同教団は8日、公式ホームページ上で声明を発表。裁判の結果が「納得がいくようなものではない」としつつ、「この7年の間、私たちはこの苦しみを通らなければ学ぶことができなかったことを学ぶことができた」と述べた。
一連の民事訴訟では、元信者側が、卞氏による元信者の女性4人に対するセクハラと(セクハラ訴訟)、元信者の男性1人に対するパワハラを訴え(パワハラ訴訟)、卞氏・教団側が元信者やその支援者ら計9人に対して、名誉を毀損されたとして損害賠償・謝罪広告掲載を要求する(名誉毀損訴訟)という、計3件が争われていた。1審の東京地裁の判決は、セクハラ訴訟で卞氏のセクハラ行為を認定、損害賠償として1540万円の支払いを命じるというもので、パワハラ訴訟、名誉毀損訴訟については、双方の訴えを退けていた。2審の東京高裁はすべての訴訟で控訴を棄却、最高裁もいずれの上告も棄却し、1審判決が確定した。
同教団の牧師一同は、7月30日付の「ご挨拶」を8日、公式ホームページ上で公開。最高裁が双方の上告を棄却し、第1審の東京地裁の判決が確定したことを受けて、「裁判の結果は、納得がいくようなものではない」とコメントした。
さらに、卞氏が元信者の女性4人のうち1人に対して乱暴した容疑で、2010年に準強姦(ごうかん)罪で起訴された裁判では、卞氏のアリバイ成立の可能性があるとして無罪が確定していることを、「刑事裁判では無実無罪(証拠不十分という理由の判決ではない)の判決を受けている」と強調。「刑事裁判での判決を主からの恵みとして受け取り、すべてのことは主の御手に委ね、これからも私たちに委ねられている使命を全うしていく所存」と記した。
また、同日に「最高裁の棄却を受けて」と題した声明も発表。最高裁の判決を「とても残念に思う」とし、「被害者と称する女性たちの証言はそのまま取り入れる一方で、私たちから提出された、しっかりした数々の証拠に対しては、控訴審、そして最高裁に至るまで、まったく触れようとしなかった」と、裁判の在り方を批判した。
判決後、卞氏・教団側の弁護士らは「今回の一連の件は、ビュン氏としては全く事実無根」とする見解を出しているが、さらに今回の声明の中では「この裁判に携わる中で、背後に『巨大な悪』が働いているという事実を知るに至った。これは弁護士人生始まって以来、初めて受けた衝撃」「今まで日本の裁判制度は、客観的な証拠を基として判決が下されてきたと信じていた。この度の判決によりそれが裏切られ、受けたショックは非常に大きい」とあらためて述べた。
「ご挨拶」の中で同教団の牧師一同は、聖書の言葉を引用して「この7年の間、私たちはこの苦しみを通らなければ学ぶことができなかったことを学ぶことができた。神様の深い愛と赦(ゆる)し、そしてパウロが告白したように『私(たち)は、どんな境遇にあっても満ち足りることを学びました』(ピリピ4:11)」と記し、「心の天国を奪われることがないように常に祈り、主にあっていつも喜ぶことを選び取ってきた」と振り返った。
「ご挨拶」「最高裁の棄却を受けて」のいずれの文面においても、被害女性らへの謝罪の言葉はなく、関係者への感謝の言葉までにとどまった。