旧約聖書の創世記に出てくる「エデンの園」があったと考えられている場所が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。
ユネスコは17日、イラク南部マイサン州アフワルにある湿地帯を、「南イラクのアフワル」として世界遺産に登録した。ユネスコはこの湿地帯について、「極めて高温で乾燥した環境にある、世界で最も大きな内陸デルタの1つで、珍しい」と評価している。英BBCによると、同地は一部の学者らからは、エデンの園があった場所と考えられている。
この湿地帯は、一時は7千平方マイル(約1万1260平方キロメートル)以上にまで広がっていったが、かつてはもっと小さかったと考えられている。1990年代には、イラクの元大統領の故サダム・フセインが、反政府グループに潜伏地として使用されるのを恐れ、その水のほとんどを排出したため、壊滅的な被害を受けた。
米アトランティック誌によると、現在は徐々に回復してきており、ユネスコによって提供される新しい保護プロジェクトにより、湿地帯が今後未来のために保護・保存されていくことになる。
世界遺産「南イラクのアフワル」は、3つの遺跡群と4つの湿地帯で構成されている。遺跡群は、古代都市・遺跡のウルク、ウル、テル・エリドゥの3カ所で、ユネスコは「古代都市ウルクとウル、古代遺跡のテル・エリドゥは、シュメールの都市や開拓地の一部を形成し、南メソポタミアで紀元前4~3世紀末の間に発達した」と説明している。
ウルは、聖書に出てくるカルデアのウルであると考えられており、アブラハムとその兄弟ハランの誕生地と考えられている。
イラクのハイダル・アバディ首相は、ユネスコの決定を称賛し、「野蛮なテロ組織によるイラクの遺産や古美術品の破壊があっても、(イラクの文化は)繁栄し続ける」と語った。
過激派組織「イスラム国」(IS)は、イラク北部ハトラ遺跡の古代要塞都市をはじめとする、イラク国内の世界遺産の数々を襲撃している。
ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長は昨年、重要な史跡を「体系的に破壊」し、「文化浄化」をしているとして、ISや別の過激派グループを非難した。
また今年初め、活動家たちは、2011年に世界遺産に指定されたシリアの修道院が、ロシア軍の空爆により被害を受けたと報告した。シリア北部の都市アレッポ近くに位置するこの修道院は、塔登者聖シメオンを記憶するもので、現存するビザンチン様式の教会としては世界最古のものだ。