パノラマ・ピクチャーズとMGMは8月、共同製作した映画「ベン・ハー」のリメイク版を公開する。予告編では、主人公のベン・ハーに影響を与えたイエス・キリストに焦点が当てられている。またBGMとして、クリスチャンの兄弟デュオ「For King & Country」による主題歌が流れる。
「ベン・ハー」は、主人公であるユダヤ人豪族の息子ジュダ・ベン・ハー(ジャック・ヒューストン)が、義兄弟でローマ軍人のメッサーラ(トビー・ケベル)に濡れ衣を着せられる波乱万丈の物語だ。ベン・ハーは地位を剥奪され、家族や恋人のエステル(ナザニン・ボニアディ)から引き離され、国外追放されて奴隷となる。
しかし数年にわたる船旅の中、突如難破したベン・ハーは、後に人生の助言者となるイルデリム(モーガン・フリーマン)と出会う。イルデリムは、メッサーラを殺すのではなく戦車レースで復讐(ふくしゅう)するようベン・ハーに勧める。その後イルデリムは、予告編にも登場する命懸けの戦車レースに向けてベン・ハーを指導する。
予告編は、エレミヤ書40章4節の「さあ、今日わたしはあなたの手の鎖を解く」という聖句で始まる。この信仰的な予告編には、イエス・キリストが、憎まずに愛することをベン・ハーに説くシーンも何度か登場する。ベン・ハーは、人にはないイエスの憐(あわ)れみ深さに心を打たれ、その恵みと憐れみを示す救い主と出会いから、心が変えられてゆく。
本作品は、マーク・バーネット、ローマ・ダウニーらを製作スタッフに迎え、製作をショーン・ダニエル(全米製作者組合)、ダンカン・ヘンダーソン(同)、監督をティマー・ベクマンベトフ、脚本をキース・クラークとジョン・リドリーが担当している。
映画史上、最も愛された作品のリメイクに声を掛けられたとき、監督のティマー・ベクマンベトフは気が進まなかったと言う。
「1959年の『ベン・ハー』は普通の映画ではなく、20世紀に社会現象を巻き起こした名作です。ですからそのリメイクのオファーを受けたとき、初めは『絶対にお断りだ』と思いました。しかし、幸運にもプロデューサーのショーン・ダニエルが、とにかく台本を読むよう説得してくれたのです。そういうわけで、この驚くほど貴重な作品が出来上がりました。衝撃的なアクションに加えて、心に迫る登場人物たちと深い洞察が見事にラインナップしています。設定は数千年前ですが、登場人物の感情や行動は現代に通じるものです」と、ベクマンベトフはクリスチャンポストへのコメントで語った。
脚本家のジョン・リドリーも、脚本を担当する上で同様の不安があったと述べている。「1959年版の熱狂的なファンにとっては、いかなるリメイクも冒とくと感じるかもしれません。しかし登場人物たちは、(原作小説が書かれた)80年前にも存在していたことを忘れないでほしいのです。多くの人にとってはチャールトン・ヘストンと戦車レースの印象が強く残っているかもしれません。ジュダ・ベン・ハーは奥の深い古典的なキャラクターですが、復讐と償いを追求する人物だと誤解されています。ベン・ハーやメッサーラのように強い魅力を持つ登場人物は、逆に繰り返し描き直されるべきなのです。それで私は、戦車レースに加えて、友人同士だった2人の人格をぶつけ合わせてみたかったのです」
「復讐と赦(ゆる)しというテーマは、今も昔も変わらない共通の問題です。登場人物が経験する葛藤は、ローマ帝国時代や、ルー・ウォーレスが小説を書いた1880年だけでなく、今日にも通じるものです。そういう感情を抱く人間の性質は、今も変わりません」とプロデューサーのダニエルは話す。
監督のベクマンベトフは、この映画に大きな意義があることを強調する。それは今もなお、われわれがさまざまな形でローマ帝国の中で生きているからだ。「私たちは今でもローマ時代の価値観と共に生きています。権力や貪欲、人生の成功が世界を支配しており、人はみな激しい競争の中で何かを成し遂げようと努力しています。真の人間らしさとは、協調であり、赦しであることに気付ている人はごくわずかです」と言い添えた。
新「ベン・ハー」は、8月12日に各国で一斉公開される予定(米国では8月19日)。通常の2Dと3D、およびデジタル3Dで放映される。日本では2017年に公開が予定されている。詳しくは公式サイトまで。
■ 映画「ベン・ハー」予告編