日本キリスト教協議会(NCC)在日外国人の人権委員会は6日、「ヘイト・スピーチ解消法成立に際しての声明」(3日付)をNCCの公式サイトで発表した。
同委員会はまず声明で、5月24日に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)が、衆議院本会議で可決・成立した歴史的背景とともに、同委員会が、「『小さくされた者』たちと共に歩まれたイエス・キリストに従い、その正義と平和のメッセージを伝えまた実現し、神によって創られた全ての命が尊重される真の多文化共生社会を目指し」、在日外国人の人権を保障するための法改正と法整備を求め続けてきたことなどに言及している。
その上で、同法について、「在日外国人に対する『差別的言動』が、被害者の『多大な苦痛』と『地域社会に深刻な亀裂を生じさせている』という害悪を認め、その解消を『喫緊の課題』(第1条)であるとして『差別的言動は許されないことを宣言する』(前文)ものであり、日本におけるはじめての反人種差別理念法としての意義を有している」と評価。「成立のために尽力された関係各位に敬意を表する」としている。
一方、「見過ごすことのできない問題点」があると指摘。「衆参両法務委員会の附帯決議において『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に鑑み』るとされたにもかかわらず、本ヘイト・スピーチ解消法本文には人種差別撤廃条約による『人種差別』の定義が採用されていない」とし、「重大な問題」だとしている。
また、「対象とする行為を差別的言動に限定するのではなく、衆院附帯決議第4項に示されたように『不当な差別的取扱いの実態の把握』の努力が求められるべきである」と主張している。
さらに、同法が対象を「本邦外出身者」としたことについて、「アイヌや沖縄などの先住民族、被差別部落出身者等に対するヘイト・スピーチを対象外としてしまう可能性がある。なによりも、本ヘイト・スピーチ解消法が差別的言動を明確に禁止しなかったことは、最大の問題であると言わざるを得ない」と強調している。
また、同法の保護対象者が「適法に居住するもの」に限定されていることについては、「国連人種差別撤廃委員会による『市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30』(2004年)における『人種差別に対する立法上の保障が、出入国管理法令上の地位にかかわりなく市民でない者に適用されることを確保すること、および立法の実施が市民でない者に差別的な効果をもつことがないよう確保すること』(パラ7)との勧告に明白に反している点も重大な問題である」と指摘している。
その上で、「わたしたちは、国及び地方公共団体運用は本ヘイト・スピーチ解消法に際して『本法の趣旨、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に照らし、第2条が規定する<本邦外出身者に対する不当な差別的言動>以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであるとの基本的認識の下、適切に対処すること』という衆議院法務委員会による附帯決議第1項を重く受け止め、実効的な対応を行うことを強く求める」としている。
そして、同法が差別解消のためのより実効的な法律となるよう、適法居住要件の削除を含めた改正を要求。最後は、「わたしたちは今後も、真の多文化共生社会を目指し、引き続き人種差別撤廃基本法ならびに外国人住民基本法の制定を強く求めていくことを明らかにする」と結んでいる。