ロシア正教会のモスクワ総主教庁とローマ・カトリック教会は、シリアで破壊された教会のリストを作成する。ロシア正教会が9日、公式英文サイトで伝えた。
「最も近い将来の優先課題の一つは、シリアにおける戦争の間に破壊されたり破損したりしたキリスト教の聖堂や教会、修道院の詳しいリストを作成するとともに、シリアの悲劇に対するキリスト教徒の共通の証しを強めることである」と、ロシア正教会は同サイトで報じた。
これは、モスクワ総主教庁とローマ・カトリック教会がシリアのキリスト教徒を支援する共同プロジェクトの一環として位置づけているもの。ロシア正教会とローマ・カトリック教会は6日から7日にかけて、レバノンとシリアで苦悩のうちにあるキリスト教徒を支援する活動を開始したという。
ロシア正教会によると、この背景には、2月12日にハバナで行われたロシア正教会のキリル総主教とローマ・カトリック教会の教皇フランシスコの会談や決定における焦点の中に、中東における悲劇が含まれていたことがある。
キリル総主教と教皇フランシスコの合意事項にあるこの側面を、いかにして実施できるかを考えようと、モスクワ総主教庁の最高指導者層とローマ・カトリック教会の指導者たちの指示により、双方の代表団がレバノンとシリアを訪問した。
代表団には、ローマ・カトリック教会モスクワ神の母大司教区のパオロ・ペッツィ大司教、ロシア正教会渉外局キリスト教徒間関係担当幹事のヒエロモンク・ステファン氏、そしてドイツのキリスト教援助団体「キルヒェ・イン・ノット(困窮する教会への支援)」代表のアンドルゼジ・ハレンバ神父とP・フメニウク氏の4人が含まれていた。
代表団は、マロン派のベカラ・ブートロス・ライ総主教や在レバノン教皇大使のガブリエレ・ジオルダノ・カッツィア大司教と会談した。この会談には、モスクワおよび全ロシア総主教のアンティオキア総主教庁代表、ヘグメン・アルセニー氏も参加していた。
また代表団は、戦争に巻き込まれたシリアからの難民25万人のための居留地域に最近なった、レバノンのベッカー高原にある最大の都市、ザーレを訪れた。キリスト教徒とイスラム教徒の両方のための避難所になった難民キャンプを見学し、アンティオキア正教会ザーレおよびバールベックのアンソニー府主教、メルキト(東方典礼カトリック)教会フォウルゾル・ザーレおよびベッカーのイッサム・ダーウィッシュ府主教ら、レバノンの同地域にある主なキリスト教共同体の最高責任者たちと会談した。
難民や貧しい人たちに日々の昼食を配給する、教会の社会奉仕活動によって運営されているスープ・キッチンの一つも訪れたという。
ザーレで開かれたセミナーで、アンティオキア正教会とメルキト教会の代表者たちは、ベッカーにおける人道状況や、地元の教派がシリアからの難民を助けるために行っている取り組みについて詳しく語った。
代表団は7日にはダマスカスに到着した。アンティオキア正教会の大聖堂を訪問し、聖シノッド書記でセレウシアのエフレム主教や、セイドナのルカス主教とブロウダンのニコラス主教およびダラアのムサ主教を含む主教たちと会談した。ロシア正教会によると、「共同プロジェクトの詳細について語ったステファン(イグムノフ)神父は、アンティオキア正教会がシリアで最大かつ最も伝統的な教派として地域の調整において担っている重要な役割を指摘した」という。
同日のその後、代表団はシリア正教会総主教のモル・イグナティウス・アフレム2世に迎えられた。同総主教はモスクワ総主教とバチカンが主導することの重要性を指摘し、シリア正教会の信徒たちが住んでいるシリア中部の都市カルヤタインが最近解放されたことを含め、シリア情勢における最新の変化について同代表団に伝えた。同総主教はこれらの展開におけるロシアの役割を高く評価するとともに、ロシアの人々に対する感謝の言葉を伝えた。
ダマスカスで行われたこのセミナーの第2部では、シリア危機の結果としての人道状況に焦点が当てられた。メルキト総主教庁で行われたこの会合は、代表団のほか、セレウシアのエフレム主教(アンティオキア正教会)、ホムズのシロアム・アル・ネメー主教(シリア正教会)、ホムズのジーン・アブド・アルバク司教とヨゼフ・アル・アブシ司教(メルキト教会)、ダマスカスのグレゴリオス・エリアス・タベ司教(シリア・カトリック教会)、ダマスカスのホブセプ・アルナウティアン司教(アルメニア・カトリック教会)、ミシェル・フレイファー神父(マロン典礼カトリック教会)、そしてダマスカス教皇大使のマリオン・ゼナリ大司教が出席した。
シリアのキリスト教諸教派の代表者たちは、同地域における実際の状況について、テロ攻撃によって大きな被害を受けていると語るとともに、この悲劇を耐えることを強いられている人たちに対する人道活動の経験について述べた。この地域のキリスト教会による援助について、所属する宗教にかかわらず、キリスト教徒とイスラム教徒の両方に届けられていることを強調した。
また、最近、同国の状況が「目に見える形で改善した」と説明し、テロリズムとの戦いとシリア危機の解決におけるロシアの「決定的な役割」に感謝を表明した。「この地域におけるキリスト教の存在を保持するというグローバルな目標を達成する途上で、幾つか最も重要な問題が解決を必要としているとして略述された」という。
これらの問題の中には、キリスト教共同体の統合の伝統的な中心としての教会や修道院を復元する必要性や、人々、特に若者たちに仕事を提供すること、シリアにとって伝統的な経済構造を再建することが含まれている。その実施においてシリア人は、同国における戦争が終わりに向かうにつれ、国際社会からの全面的な支援を期待しているという。
発題者たちは、キリスト教徒は自分の母国を離れたがらず、わずかな機会にでも戻ってくることを求めており、全てのシリア人は無私無欲に自らの祖国を回復するために働く用意があると述べた。
ロシア正教会によると、シリアにおけるさまざまなキリスト教の教派による人道活動の調整を強化する必要性が示され、「会合はこの取り組みに貢献した」という。参加者たちは会合を主催したロシア正教会とバチカン、および「キルヒェ・イン・ノット(困窮する教会への支援)」に感謝した。
キリル総主教と教皇フランシスコの会談と両指導者が署名した共同宣言が、中東のキリスト教徒にとって地域における教派間の協力を強化するための「希望のしるし」や刺激になったことがとりわけ強調されたと、ロシア正教会は伝えた。「シリアとレバノンへの旅の間に、正教会とカトリックの代表団によって地域社会と共に開かれたこれらの会議は、苦難のうちにある兄弟姉妹を支援する、さらなる共同プロジェクトを発展させるための基礎としての役目を担うであろう」と、同教会は記した。