トヨタ自動車系の大手部品メーカー「アイシン・エィ・ダブリュ」(アイシンAW=愛知県安城市)の元幹部の男性(43)から、就職活動中に不適切な関係を迫られ、精神的苦痛を受けたとして、アイシンAWの採用試験を受け不採用になった元女子大生の20代女性が、男性とアイシンAWを相手取り、慰謝料など計約600万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。提訴は3月25日付。産経新聞などが伝えた。
同紙によると、女性はアイシンAWの筆記試験に合格した後、男性から「筆記試験は合格ラインに達していなかったが、僕の一言で受からせた」などと言われ、何度も食事に誘われたという。また、毎日新聞によると、「アイシンに入れる見返りに男女の関係になる人がほしい」と、不適切な関係を迫られたという。
男性は当時、アイシンAWの製造本部副本部長で、トヨタグループの創始者である故豊田佐吉氏(1867〜1930)の兄弟の孫に当たるという。女性は、男性からの要求を断ったため、最終面接で不合格にされたとし、男性がトヨタグループ創業者の一族である立場を利用し、不適切な関係を迫ったなどと主張しているという。
中日新聞によると、アイシンAWは昨年11月、内部調査で不正が確認されたとして、男性を懲戒解雇処分
にしている。男性は同紙の取材に対し、「酒の席での軽いやりとりで彼女に妄想させてしまったことについては自覚が足りなかった」などと話し、男女関係を求めたことや、女性の就職で便宜を図ろうとしたこと、女性を不合格にするよう会社に指示したことなどは否定している。
一方、アイシンAWは訴状が届いていないとして、いずれのメディアに対してもコメントできないとしている。
毎日新聞によると、女性は昨年7月、アルバイト先の客を通して男性を紹介され、知り合うようになった。中日新聞によると、今回の訴訟では男性とアイシンAWに対し、連帯して550万円を支払うよう求めているほか、男性に対しては単独で別の不法行為もあったとして、55万円の支払いを求めているという。
アイシン精機とボーグ・ワーナーとの合弁会社として発足したアイシンAWは、自動変速機の製造では世界トップのメーカー。同社のウェブサイトによると、資本金は264億8千万円、2015年3月期の売り上げは、連結で1兆1272億円。