ロシア正教会とビリー・グラハム伝道協会(BGEA)は3月29日、迫害されたキリスト教徒を助ける取り組みを開始したとする共同の記者発表資料を各公式サイトに掲載した。
それによると、ロシア正教会とBGEAは、2016年10月28日から30日に行われる、「迫害されたキリスト教徒を防護するキリスト教指導者世界サミット」の発起団体および主催者になったという。
この記者発表資料によると、このサミットには150カ国を超える国々から千人の代表者たちが集まるという。
「このような大規模の催し物を開催する理由は、中東やアフリカ、そして世界の他の地域のキリスト教徒に対する大規模な迫害であり、それは近現代史においてかつてないほどであり、1世紀のキリスト教徒に対する迫害や、20世紀の無神論者の権力による抑圧に匹敵するものだからです」と、この記者発表資料には説明されている。
「このような大規模な悪の行いはキリスト教共同体が無視できないものです」と同資料には記されている。「ロシア正教会とビリー・グラハム伝道協会は、状況を改善することを目的に、来るべきこのサミットを、この問題に関する包括的な議論の場にすることを求めます」
ロシア正教会は、昨年10月28日に公式英文サイトで、モスクワ及び全ロシアのキリル総主教が同日、ビリー・グラハム伝道協会のウィリアム・フランクリン・グラハム総裁と会談した時のことを、以下のように伝えている。
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モスクワの聖ダニイル修道院にある総主教および聖シノド邸で行われた会談で、同協会副総裁のビクター・ハム氏と、モスクワ総主教庁渉外局副局長のフィラレート(ブレコフ)掌院がこの会談に加わっていた。
キリル総主教は、伝道協会の創立者であるビリー・グラハム牧師・博士が、1950年代と80年代のソビエト時代でさえも、モスクワを数回訪れていたと説明。その時、同牧師はイェロクホボ神現祭大聖堂で正教の参祷者たちに演説したという。
「90年代初め、ここには西洋諸国出身の人たちも含め、数多くのさまざまな宣教師たちがいた。彼らは正教徒を自分たちの信仰へと改宗させることを求めていたため、私たちは西のキリスト教徒たちとの関係を心配していた。私が思い出すのは、私の前任者であるアレクシイ2世とあなたのお父様の会談だ」と、同総主教はこの会談で来賓であるフランクリン・グラハム氏に対して語った。
「アレクシイ2世はビリー・グラハム氏に対し、ロシアの困難な状況について、そしてこれらの間違った兄弟たちのふるまいのために私たちの教会が持っていた悪い感情について語った。そしてあなたのお父様は、ビリー・グラハム(伝道)協会は決してこのやり方に沿うことはなく、むしろロシア正教会との関係を発展させると言った。この約束が(今)果たされたのだ」
キリル総主教は謝意をもってロシア正教会とビリー・グラハム伝道協会の良好な関係を説明し、感謝をもってウクライナからの難民に人道支援を提供するための共通の働きに言及した。
同総主教は、近代西洋文明の霊的基礎という話題に触れた。「ロシア正教会は『冷戦』期の間でさえ、西のキリスト教徒たちとの関係を発展させるのに積極的だった。私たちは、無心論的なイデオロギーが支配し西洋文明とはキリスト教のことだと考えられていた国家の困難な状態の中で暮らしていた。私たちは西洋のキリスト教会の自由や市民生活に対する彼らの影響を高く評価していた。私たちにとって、西のキリスト教徒たちは兄弟姉妹のようなものだ。彼らは私たちの仲間だ」
「私たちの共同の取り組みを通じて、私たちはソビエト連邦と西側との政治風土の変化に何とか影響力を行使した。私たちの関係は、同一のキリスト教文明への私たちの帰属や、共通のキリスト教の道徳的価値についての私たちの告白についての理解に基づいていた」と、同総主教は述べた。
しかしながら、キリル総主教は遺憾をもって、西洋の霊的および宗教的な生活は近年、急激な変化を経験してしまったと述べた。「西洋文明や西洋諸国は自らをキリスト教の伝統と同一視するのをやめてしまい、キリスト教の道徳的な価値は支配的であるべきではないという社会観を採り入れた。そして、同性婚を認める立法的な解決策がアメリカ合衆国を含む多くの国々でとられ、それを主が戒めで私たちにお与えになった自然な結婚と同等のものとしている。これらの解決策に従いたくない人たちは抑圧の対象となるかもしれない。今日、移り変わることのないキリスト教の道徳的価値の大切さを支持するキリスト教徒たちは、マスメディアの世界を含めて、さまざまな圧力の下で生きる信仰を告白する人たちにならなければいけなかった」
キリル総主教は、ビリー・グラハム伝道協会が勇気を持ってその信仰を告白し、そしてキリスト教の価値を守っていることに触れた。「これは私たちに希望のしるしを与えてくれる。つまり、西洋のキリスト教徒たちの間には、倫理的な原理において私たちに似た人たちがおり、それらをロシア正教会と共有している」と、同総主教は述べ、モスクワ総主教庁が、教会で同性婚を行ったり非伝統的な性的指向の人々を司祭や主教に任命するキリスト教会やキリスト教共同体といかなる連絡をも絶ったことを、聴き手たちに思い起こさせた。
「例えば、私たちは米国聖公会との連絡を断たなければならなかったが、キリスト教の倫理に忠実なままである北米聖公会は支持している。私は米国の保守的な福音派が果たす役割をあらためて心に留めたい。なぜなら彼らの立場はアメリカのキリスト教徒たちとの私たちの対話を続けるための機会を私たちに与えてくれるからだ」
キリル総主教は、来賓(フランクリン・グラハム氏)に対し、福音の真理のための勇気ある立場において、自らの賛同の意を表明した。
フランクリン・グラハム氏は、父親であるビリー・グラハム牧師・博士からのあいさつをキリル総主教に伝えるとともに、同総主教に会えて光栄であると述べ、同総主教が道徳的な苦難を経験しているこの世界において真理のために声を上げているとして、同総主教に感謝した。
同氏は、真理のために立ち上がる世界中のキリスト教徒たちを支えて共に働くことは大切だと付け加えた。
フランクリン・グラハム氏は、世界のさまざまな地域、とりわけ中東における、キリスト教徒に対する迫害に、特別な憂慮を表明した。
国際協力が持つ他の側面について、フランクリン・グラハム氏は、ウクライナからロシアへの難民に与えられている助けのように、シリアやアフガニスタン出身のヨーロッパにいる難民に助けを差し伸べる共通の取り組みの必要性に言及した。来賓(フランクリン・グラハム氏)は総主教に対し、ビリー・グラハム伝道協会の青年や子どもたちとの活動、社会奉仕やキリスト教教育について語り、さまざまな行動の分野におけるロシア正教会との協力のための自らの希望を表明した。
フランクリン・グラハム氏はロシア正教会とその総主教に自らの感謝を表明するとともに、神が総主教を保ってくださり、道徳的な立場を支えるための強さと、急激に変化しつつあるこの世界における神の御言葉の真理を、総主教にお与えくださるようにと祈っていたと語った。