聖書に可能な限り準拠し、かつ子どもたちも理解しやすいように、易しい言葉と柔らかな絵で綴られた絵本聖書「みんなの聖書 絵本シリーズ」が4月から発行される。発行を前に、同シリーズを発行する財団法人日本聖書協会(大宮溥理事長、渡部信総主事)は16日、記念の発表会を東京・銀座の教文館で開催した。会場には絵を描いた画家の藤本四郎さんと杉田幸子さんも招かれ、絵本の紹介と共に絵本の原画が展示された。同様の試みは欧米を中心に既に行われてきたが、日本人のクリスチャン画家が描き、聖書に準拠した本格的な日本オリジナルの絵本聖書は今回が初めてとなる。
製作に当たって最も重要視されたのは、聞いて内容が理解できる「聞き言葉」であることと、「聖書に準拠」していること。渡部総主事は、聖書をモチーフにされた絵本がすでに存在するが、「想像」によって記述されているものがあると問題点を指摘し、「最初の原稿がなくなるくらい」まで書き直したと、子どもでも理解できる表現でありながら聖書に準拠している絵本聖書を製作するために、多くのプロセスを経たことを語った。
4月に発売される創世記1章から3章までを描いた「せかいのはじまり」では、「はじめに かみさまは 天 と 地 を おつくりになりました」(創1:1)と神による創造が明確され、「知識の木」「りんごの木」ではなく「ぜんあくを 知る木」(創2:9)とするなど、聖書の言葉が再現されている。また、御言葉を絵で表現することも非常に難しく、聖書に基づいた正確な絵を描くために、その構図を決定するまでに多くの時間を裂いたという。
巻末には、絵本の各絵が聖書のどこに該当するのかを一目で確認できる「絵本の場面と聖書のことば」、「エデンの園はどこ?」「洗礼(バプテスマ)ってなに?」などの聖書に関わるQ&A形式の解説「聖書の世界、ちょっとくわしく」が収められ、子どもから大人まで楽しめる工夫が凝らされている。
一方、絵も日本を代表するクリスチャン画家が手がけた。旧約聖書を描く藤本四郎さんは、絵本画家、風景画家として活躍し、NHK文化センター水彩画講師などを務める。新約聖書を描く杉田幸子さんは、子どもと大人のための絵画教室『アトリエ銀穂』を主宰し、子どもや自然をテーマに描き、各地で個展を開催している。2人とも、小中学校教科書や多数の絵本で表紙や挿絵を手がけている一流だ。
同協会では今から15年前に、子ども向けにオランダ聖書協会の発行した絵本聖書を翻訳・頒布するなどの取り組みを行ってはいたが、登場人物が西洋人として描かれているなど「輸入物」としての欠点があった。そこで、04年から08年までの5カ年計画の主要企画として絵本聖書が持ち上がり、今回の発行に至るまでになった。
4月に第1冊目が発行され、その後3年間毎月1冊ずつ、ほぼ旧約と新約が交互に発行される。旧約17冊、新約19冊の全36冊のシリーズで、復活祭(イースター)を迎える3月にはイエスの復活についての場面が、クリスマスがある12月にはイエス・キリストの誕生についての場面が発行されるなどの工夫もされている。
また、紙面に触れるだけで印刷物から音声や音楽を聞くことができるIT機器「音筆(おんぴつ)」にも対応しており、同協会親善大使の教会音楽家・久米小百合さんによる朗読も聞くことができる。「みんなの聖書 絵本シリーズ」は各冊共に1冊1000円(税込)。「音筆」は、1年間12冊分の音声データを内蔵したマイクロSDカード付で1万5700円(予価・税込)で販売される。
年間購読の募集も行われており、申し込み者には12冊分(通常1000円×12冊=1万2000円)を特別価格9800円で購読できる、聖書に登場するキャラクターが描かれたオリジナルカレンダーがプレゼントされるなどの特典も用意されている。申し込みは、全国の書店で5月末まで受付されている。