13日午前1時55分、市川崑監督が入院中の都内病院で肺炎のため死去。親族が見守る中、静かに息を引き取った。92歳であった。
クリスチャンであった市川監督の葬儀と告別式は15日、自宅近くの東京・カトリック渋谷教会で行われ、近親者のほか、市川組のスタッフや教会仲間ら約20人が最後の別れに訪れた。
作品「ビルマの竪琴」で主演を果たした中井貴一(46)は、「父親であり、師匠。親と一緒でいてくださるのが当たり前だと思っていました」「いつも監督の作品は見ていたし、監督が(中井と)やりたいなあと思ってくれるように仕事をしていた」と俳優として育ててくれた恩師への思いを語った。
また、市川監督の作品4本に出演した吉永小百合は「私の出演作を見ていただいていて、寸評でお手紙を頂いていた。心の支えでした」と日本映画界の歴史を長く共にし、コンビを組んできた思い出を振り返った。
市川監督はこれまで、「ビルマの竪琴」(56年)、「東京オリンピック」(65年)、「犬神家の一族」(76年)、「細雪」(83年)、またテレビドラマ「木枯し紋次郎」(72年)など、多くの秀作を残してきた。94年には文化功労者に選出されている。
国際的な評価も高く、ヴェネチア国際映画祭サン・ジョルジョ賞、カンヌ国際映画祭グランプリ、カンヌ国際映画祭青少年向映画賞、ベルリン映画祭ベルリナーレ・カメラ賞などを受賞。日本の映画界へ大きな影響を与え続けてきた。
各テレビ局では追悼記念番組が放送され、市川監督の生涯と共に各作品が紹介された。多岐に渡るジャンルで活躍し、独特な映像美と創意工夫を惜しまない実験精神に満ちた名匠として数々の名作を世に残しながらも、91歳の誕生日前には、「もう少し長生きして、ちゃんとした映画をつくりたい」と語っていたという。