「宣教、それは生活のすべての領域におけるシャローム化」と言ったのはオランダのホーケンダイクという人です。ホーケンダイク? 封建大工と書くから昔の大工さん? と思うかも知れませんが、現代の神学者です。
シャローム。イスラエルの言葉ですが、平和、平安という今や世界中で通用する感じです。平和、それはともに生きられることです。ですから、神の愛と恵みのもと、みんなが共に生きられるシャロームの現実を、生活のあらゆる領域で作り出していくことこそが宣教なのだとなります。
ホーケンダイクは、(1)み言葉によるシャロームの宣言(ケリュグマ=聖書の指針の徹底)、(2)相互の生きた交わり(コイノニア=主にある交わり)、(3)すべての人に僕として仕える謙虚さ(ディアコニア=奉仕)の三つがシャロームの内実としてもたらされる時、孤独が克服され、不正がなくなり、人々が希望をもって生きるようになると言っています。
このような神のシャローム化を広く豊かに拡げていく宣教に従事せねばなりません。ですから人々に手を差し伸べるOutreach、このアウトリーチこそ福音宣教の内容だと言われるのです。
Outreach、誰ですか麻雀で使うリーチという言葉は知っているけれど、アウトリーチなんてなどとブツブツ言っている人は。
福音をあまねく広く発言していくアウトリーチ、それは「伸ばす、拡げる、超える」などという地平の豊かさをイメージさせられますよね。
どうしても狭くなりがちな現実の中、シャローム化による広さへと向かいたいものです。なぜって空間を拡げ、広き所に導かれ解放されることが救いなのですから。
「わたしを敵の手に渡すことなく、わたしの足を広い所に立たせてくださいました」(詩編三一篇9。他に一八篇20、サムエル下二二章20等を参照)。
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山北宣久(やまきた・のぶひさ)
1941年4月1日東京生まれ。立教大学、東京神学大学大学院を卒業。1975年以降聖ヶ丘教会牧師をつとめる。現在日本基督教団総会議長。著書に『福音のタネ 笑いのネタ』、『おもしろキリスト教Q&A 77』、『愛の祭典』、『きょうは何の日?』、『福音と笑い これぞ福笑い』など。
このコラムで紹介する『それゆけ伝道』(教文館、02年)は、同氏が宣教論と伝道実践の間にある溝を埋めたいとの思いで発表した著書。「元気がない」と言われているキリスト教会の活性化を期して、「元気の出る」100のエッセイを書き上げた。