キリスト教に対する当局の取り締まりに抗議していた牧師が、いわゆる「黒監獄」から解放されたことを、活動家らが確認した。
浙江省東部出身の黄益梓氏は昨年9月12日、公式には「国家の治安を脅かした」として収監された。黄氏は「国家機密を盗み、スパイ行為をし、買い取り、あるいは国外の団体や個人に違法に提供した」罪で告発され、弁護士との接見や家族との面会も許されなかった。
人権団体「チャイナエイド」は5日、逮捕後5カ月を経て黄氏が解放されたことを確認した。
チャイナエイドの創立者で代表の傅希秋氏は取材に対し、黄氏が「顔色が悪くやつれた」ように見えると述べ、黄氏が釈放の前、甚大なプレッシャーと脅迫に遭っていたと語った。
黄氏は以前、浙江省で十字架の撤去に反対する徹夜祈祷会を開催したことを理由に懲役1年の刑に服していたが、昨年8月1日に釈放されていた。2014年7月、警察は水頭救世教堂の屋根から十字架を撤去しようと試み、建物を守っていた教会員と衝突し負傷者が発生した。
警察官は立ちはだかる者に対して鉄の警棒で殴打したと報じられており、会衆の一人が頭蓋骨骨折のけがを負った。最終的には、十字架は教会から撤去された。
事件後、黄氏は会衆の一部を率い、事件について政府機関に出向いて回答を求めた。さらに黄氏はほかの教会の指導者に十字架をもう一度設置するよう勧めた上、警察の暴力をブログで批判した。彼は教会からの十字架の撤去を、「厳しい迫害」の一例であり中国のキリスト教徒への「侮辱」だと批判した。
彼は、中国最大のキリスト教徒の共同体があり、「東方のエルサレム」ともいわれる温州市で鳳臥教会を牧会している。黄氏は、浙江省の温州市と金華市で昨年末までに黒監獄に拘禁された、少なくとも20人のキリスト教徒のうちの一人だった。
当局は、拘禁された人たちが「特定の場所にある監視のための居住施設」に収容されていると発表しているが、こうした「黒監獄」は法的根拠を持たない。チャイナエイドによると、拷問は日常的で、被拘禁者は家族や法的代理人との筆談や口頭での会話を含む一切のコミュニケーションを禁じられている。
傅氏は9日、「私たちは、中国春節の日に、専横的に黒監獄に5カ月間拘禁されていた黄牧師が解放されたことをうれしく思います。刑罰としての1年間の収監も、5カ月間の拘禁も、当局による十字架の強制撤去に対し黄牧師が公に反対したこと、さらに黄牧師が政府公認の三自愛国教会とは独立した真の福音宣教を組織しようとしていたことに対する政治的な報復の一部です。私は政府高官に対し、黄牧師の拘禁それ自体が専横的であると断じ、浙江省で権力を乱用した者の行いについて責任を取り、黄牧師の名誉を回復するよう求めます」と語った。
3年間にわたる一連の「三改一拆(3つの修正と1つの破壊)」キャンペーンにより、浙江省内の1700に上る教会が破壊されたり十字架を撤去されている。「三改一拆」キャンペーンは、表面的には「違法建築」を明らかにし撤去することが目的だ。しかし、この運動は中国国内でキリスト教の影響力が高まっていることに対する運動だという見方が大勢を占めている。