韓国キリスト教教会協議会(NCCK)の女性委員会は7日、従軍慰安婦問題に関する日韓外相会談に関する立場を声明で発表した。また、同協議会の国際委員会も8日、この会談について前日に書かれた声明を発表した。いずれもNCCKが公式サイトに掲載した。
一方、日本キリスト教協議会(NCCJ)女性委員会は20日、市民運動の全国的な集まりである「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」が18日に発表した抗議声明「被害者不在の日韓『合意』は解決ではない ~『提言』の実現を求める~」と同団体の行動に賛同することを決定した。
以下は順に、NCCK女性委員会と同国際委員会による声明の日本語訳である。
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NCCK女性委員会の声明
韓国キリスト教教会協議会の女性委員会は、女性と社会的弱者の人権と痛みに共感し、公正な社会を実現するために努力しなければならないと信じている。だから、私たちは、去る2015年12月28日の、「慰安婦」問題の合意のニュースに、怒りを隠すことができない。これは、光復70周年、日韓国交正常化50周年である2015年に合意を強行するための、拙速な処理にすぎない。被害当事者である「慰安婦」ハルモニたちを排除したまま行われた今回の合意は、歴史的な過ちを再確認するだけで、「最終的かつ不可逆的な解決」に合意した韓国政府は、責任を免れないだろう。
私たちは、日本の法的賠償を通じた被害者の人権回復、公式謝罪を通じた真の和解の過程が重要であることを明らかにする。被害者の話を聞くことから和解は始まる。12・28合意は、被害者の声と要求が完全に排除されたまま行われた。国会決議による謝罪や真心からの謝罪ではなく、傲慢な暴力を再び行使したものである。過去の日本の歴史的過ちを「封印」する12・28合意は、被害当事者とこれまでの「慰安婦」被害者のための運動の精神を無残にも踏みにじった。23年以上の「戦争犯罪を認め、真相究明、公式謝罪、法的賠償、戦犯処罰、歴史教科書への記録、追悼碑と資料館の建設」などの叫びは、今回の合意により、無残にも踏みにじられた。私たちは真の公式謝罪を望んでいる。真の悔い改めを通じた謝罪だけが、被害者を癒やすことができると信じている。被害当事者の人権蹂躙(じゅうりん)が再び起こらないように、公式の手続きを踏まなければならない。
私たちは、日本軍「慰安婦」問題を正義の下に解決することを望んでいる。12・28合意は決して正義を実現できるものではなく、また別の強制性を有している。日本政府の強制動員の事実とこれに伴う法的、歴史的責任を明確にすることが、「許し」の前提条件である。前提条件の解決なしに、被害者に加害者を許して理解しろと強要することは、全く正義ではない。許しの始まりは、被害者が認めることができるとき、受け入れることができるときに可能である。癒やしは、ここから始まる。被害者の涙と血で濡れた人生を、単なる「時間」と記録してはならない。痛くつらい記憶である。しかし、記憶しておかなければならず、二度と起きてはならない羞恥の記憶である。歴史的責任感を持って、私たちの精神を込めた平和の少女像は、反面教師の象徴である。同じことが二度と繰り返されないために、私たちが保存して覚えておくべき時代精神なのだ。これは、限られた政府の権力が撤去と移転を決めることのできない、平和と責任という、人類の精神の産物である。
日韓の真の平和は、東アジアの恒久的な平和にも寄与する。だから、私たちは、神が私たちに与えられた最も重要な時代的使命であり、宣教的課題である「平和を実現する仕事」に、断固として先頭に立つものである。日本軍「慰安婦」問題は、個人的な問題ではなく、社会的、国家的な問題であることから、日韓政府が先頭に立って、過去の過ちを清算するために、真の正義と平和を追求することを強く要求する。
2016年1月7日
韓国キリスト教教会協議会
総務 キム・ヨンジュ
女性委員会
委員長 チェ・ソヨン
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韓国キリスト教教会協議会(NCCK)国際委員会
12・28韓日外相会談 日本軍「慰安婦」問題に対する声明書
王が助けを求めて叫ぶ乏しい人を
助けるものもない貧しい人を救いますように。
弱い人、乏しい人を憐れみ
乏しい人の命を救い
不法に虐げる者から彼らの命を贖(あがな)いますように。
王の目に彼らの血が貴いものとされますように。
(詩編72編12~14節)
本委員会は、去る2015年12月28日韓日外相会談の合意結果に深刻な憂慮を表明する。
今回の合意には、手続きと形式、内容などあらゆる面で致命的な欠陥がある。被害当事者である「慰安婦」ハルモニたちを徹底的に排除したまま行われた今回の合意は、手続きにおいて正当性を認められない。国家間の合意において、事情変更の原則によれば、条約締結当時の条件が著しく変更されたときには、再協商を通して条約の修正と廃棄がいつでも可能なことが、国際法と国際慣例である。両国政府が使用した「最終的かつ不可逆的なもの」という表現は両国政府自らもその正当性を認めることができないという事実を反証するものであり、野合による結果であることを立証するものである。
2011年、憲法裁判所は日本軍「慰安婦」の賠償に関する紛争解決の不作為または韓国政府の「慰安婦」被害の外交的放置事件(2006年憲マ788)において、大韓民国政府が「慰安婦」の賠償請求権において、外交経路を通して日本に異議を申し立てなかったことは、国民の権利保護の義務を履行しなかった不作為による違憲であることを確認するという趣旨の認容判決を下した。これによって、私たちは、今回の12・28合意を2011年憲法裁判所判決とまさに背馳(はいち)する行為であると規定し、行政府がこの判決を履行しないならば、不法行為であり、違憲行為であると宣言する。
また、私たちは、今回の12・28合意を、1965年韓日協定体制、すなわち、植民地残滓(ざんし)の未精算を骨子とする戦後の秩序を、強制的に再封印したものであると考える。1965年韓日協定は両当事国の署名により、国際法上の手続きを踏んではいるが、12・28合意はそれすら全く欠いたまま、合意文なき合意、協定文なき協定を発表した。これは拙速であり、国民に何の強制力も持ち得ない約束、または宣言にすぎない。特に、自分たちが言い立てていた「被害者の受容、国民の納得」という原則すら守らずに履行されたものであるから、政治的約束と呼んでも差し支えないだろう。
このような欠陥にもかかわらず、両国政府が今回の12・28合意を、また拙速に履行しようとするならば、私たちはこれが韓・日・米三角軍事同盟強化という、もう一つの外交、軍事的行為を念頭に置いた行為ではないかと疑う他ない。韓米軍事同盟、米日軍事同盟など二つの軍事同盟の残りの一辺、すなわち、韓日軍事関係にとってつまずきの石と見られてきた歴史問題である「慰安婦」問題を封印するために、大急ぎでやったことであろう。
日本軍「慰安婦」被害当事者であるハルモニたちやいろいろな市民団体が23年余り、「戦争犯罪の認定、真相究明、公式謝罪、法的賠償、戦犯(責任者)処罰、歴史教科書への記述、追悼碑と資料館の建立」などを叫び、その間数回の韓日両国の間での対話が行われても終結できなかった問題であるが、合意文もない合意を通して「慰安婦」問題を解決したというニュースは納得しがたい。また合意を行うまでの過程には、人権を踏みにじられた被害者たちの参与が保障されなかった。被害者たちの権利も無視したまま、合意文もない合意を行った。これは明らかに外交的失策であり、被害者たちに、今一度暴力を行使するものである。加害国と被害国の合意を通して、被害当事者である「慰安婦」の人権がもう一度蹂躪されたばかりか、国際社会から「許せ」と強要されている。これは明らかな国家の暴力である。加害者はベールに包まれたまま、被害者だけが年老いていく。許しは被害者たちが認めることができ、受け入れることができるときに初めて可能となる。癒やしは、ここから始まる。
本委員会はここに、日本軍「慰安婦」被害者たちの踏みにじられた天与の人権を守るため、また未来の世代に再び「慰安婦」がつくられることがないように、以下の立場を明らかにする。
12・28合意は「最終的かつ不可逆的なもの」として受け入れることはできず、違憲であることが極めて明らかである。日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権は依然として有効な権利であることを再確認し、権利を闘い取るため、共に闘うことを明らかにする。
平和の少女像は、それ自体が普遍的な人権の象徴であり、アジアの平和の印であって、撤去、移転をすることはできない。市民社会団体との積極的連帯を通して保存することを明らかにする。
12・28合意が、韓・米・日の三角軍事同盟の強化をたくらんでいるならば、生命、正義、平和、人権を守るため、さらには、韓半島と東アジアの平和のため、強力にこれを拒否する。
現政府は事態の速やかな復旧と責任者に対する厳重な問責によって、今後警戒をするように勧告する。
本委員会は上記の立場が貫徹されるまで、韓国教会と市民社会、団体などの立場を世界教会協議会はじめ世界の教会のエキュメニカル・パートナーたちに積極的に知らせ、これ以上歪曲(わいきょく)が起こらないよう進んで説得するものであり、12・28合意に対する見方の違いを認識して、正しい歴史をうち建てるため努力するものである。
2016年1月7日
韓国キリスト教教会協議会
総務 キム・ヨンジュ
国際委員会委員長 キム・ヨンジン