日本聖書協会主催のクリスマス礼拝および聖書事業功労者表彰式が10日、日本基督教団富士見町教会(東京都千代田区)で行われた。同協会総主事の渡部信(わたべ・まこと)氏が、「救い主にあってはこの世で解決できない問題はない」とクリスマスのメッセージを語った。表彰式では、2015年度の聖書事業功労団体、オランダのキリスト教印刷製本会社ロイヤル・ヨングブロードから送られた手紙が代読された。
クリスマス礼拝の冒頭で同協会理事の内藤淳一郎牧師は、「世界はテロをはじめとする争いや貧困、痛みとわずらいに満ちているが、すべての人を照らす命の光として私たちのうちに来てくださったあなたは、希望と生きる勇気を与えてくださる」とキリスト降誕に対する感謝の祈りをささげた。また、全地の教会のために、諸教会のクリスマス集会が神の光を豊かに顕(あらわ)すことができるように、聖書を世に送り出す日本聖書協会が諸教会と協力して働きを進めていくことができるようにと、祝福を祈った。
参加者一同による賛美と、オペラ歌手ありめせつこ氏による特別賛美「O Holy Night」「アヴェ・マリア」がささげられたのち、渡部氏がヨハネによる福音書1章1~5節から「救い主の到来」と題してクリスマスメッセージを取り次いだ。渡部氏は、日頃の同協会に対する支援への感謝を述べた上で、「神であられる方が、私たちを罪から救うためにこの地に来てくださったこと以上に大きな喜びはない」とあいさつ。また、昨今の社会状況について「戦後70年間は日本も平和だったが、どうも最近世界がおかしくなったと感じる」と言及し、「目に見える部分は経済発展によって進歩し豊かになった一方で、目に見えない部分には暗闇が忍び寄っているよう。前に進んだようで実際は後退しているような感覚を覚える」と話した。
聖書には、さまざまな危険がひそんでいるこの世界から人々を救う、まさにスーパースターのような救い主が現れたことが書かれている。しかし、その姿がスーパースターというにはあまりに似つかわしくないほどに謙虚で謙遜だったが故に、その内にある光に気付かない人が多かった。「この救い主イエス・キリストに解決できない問題はない」と、渡部氏は力強く語る。「私たちが救い主を信じ一生懸命に求めるならば、必ず救いがある。この方にしか救いはない」。このクリスマスの時、救いを宣べ伝えるべき教会やクリスチャンが悩んでいては、クリスマスのメッセージを人々に伝えることはできない。「まずはクリスチャン一人一人が、本物の救い主であり、本当の救いを与えてくださる主により頼んで歩んでいこう」と締めくくった。
「聖書事業功労者賞」は、毎年、その年の聖書普及のための事業に貢献した人物・団体に贈られるもので、2015年度は、オランダのキリスト教出版印刷製本会社「ロイヤル・ヨングブロード」が選ばれた。アムステルダム北部のへーレンフェーンに1863年に設立された、世界で最も薄くて軽い用紙での印刷製本技術を持つ会社で、1999年からオランダ聖書協会の聖書製作に携わり、世界中で多くの言語の聖書製作に携わってきた。
100年以上の歴史を持つこと、超薄紙製本分野で世界をリードしていること、製品の90%以上を海外に輸出している国家的な事業を展開していることが評価され、オランダ国王から「ロイヤル」の称号を与えられている。また、キリスト教出版社としての働きも行っており、児童向け書籍、キリスト教学習用書籍などを多数刊行してきた。
2012年以降、日本において、従来の聖書の4割減の重さを実現したハーフボリュームバイブルなどの画期的な聖書製作を請負ってきた実績に対して、今回の感謝状が贈られることとなった。クリスマス前の多忙期につき、関係者の来日はかなわなかったが、手紙が代読された。「私たちは、聖書の最も重要な点が品質ではなく、メッセージの質であることを知っている。私たちは、メッセージの包装作業をさせていただいているにすぎないが、皆様のために自信を持って製作し、それを達成できたことに誇りを持っている」
1875年に設立された日本聖書協会は、今年で140年を迎えた。「この1年も日本全国の教会と賛同者の励ましを得て、多くの聖書頒布に貢献できた」と、同協会理事長の大宮溥氏は最後にあいさつ。出版頒布の収入からだけでなく、多くの人々からの寄付、後援会員からの助けを受けていることへの感謝を表し、新年度以降の引き続きの支援を呼び掛けた。
また、2010年から進められている新翻訳聖書事業が、40%ほどまで完成したことを報告。「原典翻訳担当と日本語翻訳担当に分かれて作業をしているので、正確な訳であるというだけでなく、日本語としても美しい響きを持った訳になりつつある。期待していただければ」と話した。