国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(以下、アムネスティ)は、秘密裏に死刑執行が行われているとされるナイジェリアを強く非難している。同団体アフリカ部長、アーウィン・ヴァン・デル・ボルト氏は、「ナイジェリア政府は世界を欺いている。死刑執行の真実の記録を公開し、国内のすべての死刑執行をただちに停止し、なぜこのようなことが起こり得たのかを徹底的に調査すべきだ」と声明を発表した。
アムネスティは17日、ナイジェリアにおいて最近2年間で少なくとも7人の死刑が執行されたという証拠を公表した。
アムネスティによると、7人は、全員がカノ州の裁判所で有罪判決を受け、ジョス、カドゥナ、エヌグなど各地の刑務所に移送された。そのうち2人は、強盗・火器に関する犯罪の疑いで裁判を受け有罪となったが、刑事手続き全体を通じて弁護士はつかず、上訴の機会もなかった。2人は最後まで無実を主張していた。
ナイジェリアの政府代表は今年11月、国内での死刑執行について「最高裁への上訴を含め、法律に基づいた十分な裁判手続きを経た上で、刑罰が科されている」「ナイジェリアでは近年死刑は1件も執行されていないことは、そのようにはっきりと記録されている」と発言。最近も、死刑執行は「ここ何年も」行われていないと断言していた。
ボルト氏は、「人間の生命を奪うというような重大な問題について、政府が偽りを述べることに、弁解の余地はない。ナイジェリア政府が故意に国際社会を欺こうとしていることに衝撃を受けている」と語った。
アムネスティによると、ナイジェリアには約700人の死刑囚がいると推定される。02年以降は死刑が執行されていないと広く認識されていた。国内の死刑囚監房には現在、10年以上も拘束されている者が200人以上いる。
99年以降、州の高等裁判所への上訴権が復活したことになっているが、多くの場合、被拘束者はこの権利について知らされておらず、あるいは弁護人がいない、またお金がないために上訴を申し立てた例は1件もない。
政府が設置した死刑に関する国家調査団は04年、「人の生命を奪う制度は、まず公正でなければならない」として、「ナイジェリアの刑事司法制度が死刑事件について基本的な公平性および適正な手続きを保証でき、冤罪の可能性を最小限にとどめることができるようになるまで」死刑の執行を停止するよう勧告した。
司法行政改革に関する大統領委員会(PCRAJ)は、07年5月に上記の結論を繰り返し、「ナイジェリアの刑事司法制度が死刑事件について基本的な公平性と適切な手続きを保証できるようになるまで、正式に執行を停止するよう」求めた。PCRAJは、「連邦政府も州政府も、長きにわたって刑事司法制度に存在してきた問題点をもはや無視することはできない」と結論づけた。
国家調査団も大統領委員会も、死刑囚は「ほとんどが極貧状態にあり、弁護人がいない」ことを強調している。
1977年では16だった死刑廃止国は、現在90カ国に。執行を長期停止し、事実上死刑制度を停止した国を加えると133カ国(今年11月現在)に達する。最近10年間だけで約30カ国が死刑制度を廃止、または停止した。国連総会は18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。