今の時代は、「サプリメント全盛時代」と呼ばれています。「ぴったりリサーチ」による「サプリメントに関するアンケート」によれば、5人に1人が毎日サプリメントを口にしていることが分かります。毎日飲んでいる人は22%、週に数回程度が10%、月に数回程度7%、体調の悪いときだけ飲む人は8%です。すなわち月に1回以上飲用している人の割合は、全体の約4割を占め、多数の人々がサプリメントを愛用していることが分かります。では、そのサプリメントとは元来何でしょうか。『広辞苑』によれば、「付録」という意味と「補遺」、つまり、もらし落とした事柄を拾い補うこと、またその補ったもの、という定義が出ています。
ところで、「魂のサプリメント」という言葉が聞かれるようになりました。それを提唱し、またビジネス化した人は江原啓之氏です。彼はテレビやマスコミで大活躍中の人で、自らをスピリチュアル・カウンセラーと呼んでいます。そして、彼が語る言葉をスピリチュアル・メッセージ(魂のサプリメント)と呼び、自らサプリメントブームに乗りアピールした人です。しかも彼の著書は既に700万部(2007年)以上売れ、今も売れています。5万部売れればベストセラーと言われますが、700万部とは気が遠くなるような数字です。彼はそこでスピリチュアルspiritual(霊的な)という言葉と、もう一つはスピリチュアリティーspirituality(霊性)という二つの事柄を取り上げ、社会にアピールしています。ここで耳にする新しい言葉が、「霊的な」、あるいは「霊性」という二つの言葉です。
10年前まで、スピリチュアルとか、スピリチュアリティーという言葉は、日常生活でほとんど耳にしませんでした。私は25年ぐらい前から、キリスト教会で行うカウンセリングを「スピリチュアル・カウンセリング」と呼んできました。しかしながら、私は700万部もの本を書いていませんから、ポピュラーになりませんでした。しかし、江原啓之氏は「魂のサプリメント」という切り口で、日本の多くの人々、特にお茶の間のご婦人方の心をしっかりとらえた人と言われています。
では、なぜ今の時代、スピリチュアル、あるいはスピリチュアリティーという言葉が言われるようになったのでしょうか。それは、時代の要求です。すなわち、このスピリチュアリティーという言葉が登場する背景には、人々のニーズがあります。1970年代に入ってから、社会が豊かになったはずの日本ですが、環境問題が起こってきました。人々の間に空虚感が広がり始め、科学文明・物質文明の負の側面が目立つようになってきました。しかし、宗教にはもはや戻れません。特にオウム事件以降、人々の警戒心は非常に高まってきました。そこで個々がスピリチュアリティーといった精神的な価値を求める動きが出てきたのです。
「スピリチュアル・ナビゲーター」というインターネットサイトがあります。このウェブサイトは2006年の9月に開設されたものですが、月間アクセス数が関連サイトを含めて何と100万件にも及ぶそうです。これだけの人々がこの「スピリチュアル・ナビゲーター」のインターネット・ウェブサイトにアクセスしているということです。
ところで、前々からスピリチュアル・メッセージを語っている書物があります。それは聖書(バイブル)です。バイブルは2千年前から、旧約聖書にまでさかのぼるならば4千年、5千年前からこのスピリチュアル・メッセージを語り続け、私たちにスピリチュアル・カウンセリングを提供しています。しかもそのメッセージの中身は、崇高な世界的レベルで語られています。私たちはこのコラムで、「山上の垂訓とビジネス」というテーマを順に勉強してきました。「山上の垂訓」は、イエス・キリストが語られた有名な垂訓集(マタイの福音書5章)です。「心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人たちのものだから。悲しむ者は幸いです。その人たちは慰められるから。柔和な者は幸いです。その人は地を受け継ぐから」と順に続きます。次回はその一訓、「あわれみ深い者は幸いです。その人たちはあわれみを受けるから」(マタイの福音書5:7)に的を絞り、話を進めていきます。
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