バチカンの欧州安全保障協力機構(OSCE)常駐代表は17日、ヨーロッパでのキリスト教徒に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)は過小評価されていると指摘した。
バチカンOSCE常駐代表のモンシニョール・ヤヌシュ・ウルバンツィク司祭は、ヘイトクライムへの対応について声明を発表し、「多数派に対するヘイトクライムへの関心は薄い」と非難した。
さらに、「宗教的な偏見や先入観が原因のヘイトクライムは過小評価され、記録に残っていない面が多いという事実は、宗教の信者、特にキリスト教徒に対するヘイトクライムが(年次報告に)示されるより確かに多いことを示している」と述べた。
声明は、キリスト教徒に対する「ヘイトクライムの非常に著しい件数」を強調し、キリスト教が少数宗教ではないので、弱い立場だとは見なされていないのではないかと主張した。
「『少数派』という語は『被害者』の同義語として使われており、あたかも被害者は少数派にしかいないと言わんばかりです」とウルバンツィク司祭。
対キリスト教徒の他に、ウルバンツィク司祭は反ユダヤ主義の犯罪もまた過小評価され、告発数も少なすぎると指摘した。
「反ユダヤ主義のヘイトクライムと、宗教的偏見や先入観が原因のヘイトクライムは、人に対してではなく財産に対して行われています。事実、そのようなヘイトクライムの60~70%は、財産に対するものでした」
「財産に対する犯罪が人に対する犯罪よりも深刻でないと見なす地域もありますから、過小評価されるリスクと捜査や告発に進みづらくなるリスクがあります」
ウルバンツィク司祭はOSCEに対し、宗教に関連するヘイトクライムについてより注視するよう呼び掛け、中でも多数派の宗教に対するものには「データ収集と法律の執行についての訓練プログラム」が必要だと述べた。
ウルバンツィク司祭の声明は、ロンドンでイスラム教徒に対するヘイトクライムが激増したとする、先月の警察当局の発表を受けて出された。