福音派やカトリックの主要な団体は、中絶、性自認、同性婚についての米国保健福祉省の規定の改正案が、信教の自由を侵害しかねないとして、共同で警告した。
全米福音協会(NAE)、南部バプテスト連盟倫理と信教の自由委員会、家庭研究協議会(FRC)、全米カトリック司教会議などは先週、共同で声明を発表し、宗教団体が中絶、性自認、同性婚についてその信仰に反する行いをするよう義務付けられるのではないかとの懸念を述べた。
例えば中絶の委託や填補、性転換に関わる医療費の支払い、同性愛関係にある人の雇用の是非などについて、信仰に真っ向から反する行動をするよう義務付けられる可能性がある。
議論の的となっているのは、医療保険制度改革法第1557条による非差別規定の改正案だ。
声明には、「私たちは、医療プログラムや活動における性差別の防止が、称賛されるに足る制定理由であることを認めます。誰もが医療的ケアと保険を受けられるべきです」とある。
「宗教団体においては、その教義に反する部分の適用を除外されるべきです」
声明は、改正案における「性差別」の強固な定義が「妊娠の終了」「性自認」「関係や交際」を含むことに懸念を表明している。「関係や交際」には、同性婚の関係も含まれる可能性があると捉えられている。
「性差別の定義の拡大は、タイトル9(男女教育機会均等法)の文言と制定の歴史に根拠がなく、また患者のプライバシー権に有害な影響を与え、事例によっては実効的な医療サービスを提供することの妨げとなり、医療サービスの提供者、保険業者や他の関係者の宗教的、道徳的信念を侵害する可能性があります」
「最後に、第1557条が引用しているタイトル9のような法律においては、その適用には適切な範囲での宗教的な適用除外があるべきです。私たちは、この声明で勧めている変更は不可欠であると信じており、もし変更がなければ、法の適用は法廷での精査に堪えないだろうと考えています」
全米福音協会(NAE)政府関係担当副代表のガレン・キャリー氏は、9日に発表した声明の中で、この共同声明を保健福祉省市民権室が考慮していることから、希望を持っていると語った。
「この国の行政システムが、規程の案について行政官に意見を述べる権利と機会を与えてくださっていることに感謝します」とキャリー氏。
「私たちは、市民権室が私たちの勧めを慎重に考慮し、全ての米国人の最善を図り、法的に正当かつ賢い規程を制定できるよう願います」
今月初旬、保健福祉省市民権室は、この規程案に対するパブリックコメントを募集することを発表した。市民権室の説明では、新しい規程の目的は、医療的ケアの填補範囲について非差別政策を拡大することにある。
「従来、保健福祉省市民権室が制定した市民権法は、人種、肌の色、出身国、障がい、年齢に基づく差別を禁止していました」
「規程案は、(すべての)市民権を尊重する義務を医療保険取引所と保健福祉省による医療プログラムと活動にも拡大し、またあらゆる理由による差別について第1557条を履行するために、保健福祉省が適用する基準を明白にしています」
市民権室は、規程案に盛り込むべき宗教的適用除外のレベルについて特にコメントを求めていると述べた。
「規程案について、第1557条が宗教団体に対して適用除外をするべきかどうか、また適用除外の範囲がどれだけであるべきかについてコメントを求めます」
「規程案の中には、提供者良心法や、予防医療サービスに関連する医療保険改革法の適用などにあるような、現に存在する宗教的信念や実践に対する保護の適用を妨げるものはありません」
共同声明に署名した他の団体には、キリスト教法曹会(CLS)、キリスト教医師会(CMA)、信教の自由同盟、リバティ・インスティテュート、全米カトリック生体倫理センターなどがある。