16世紀の宗教改革者マルティン・ルターが所有していた聖書など貴重な蔵書を保存するドイツ・ワイマールのアンナ・アマリア図書館がこのほど、04年に発生した火災による被害の修復を終え、12月から一般公開を開始した。3年前の火災によって、屋根裏やロココ様式のホールのほか、100万冊に及ぶ蔵書の内約5万冊が焼失、6万2000冊が損傷したが、1300万ユーロ(約21億円)を投じて修復された。朝日新聞が14日伝えた。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にも登録されている1565年建築の同図書館は、04年9月に漏電が原因で大きな火災に見舞われた。ルターが所有していた聖書の他、天文学者コペルニクスの蔵書、3900冊にものぼる世界最大のゲーテ「ファウスト」コレクションなど貴重な物品を所蔵。2000冊余りの中世・近代の写本、約600の系図表、約4000の楽譜、約1万の歴史的地図なども所蔵していた。コペルニクスの蔵書は、100万ユーロ(約1億6200万円)以上の価値が付けられていたが、04年の火事で焼失してしまっている。
火災のほか消火活動などで痛んだ本の内、約2000冊は約400万ユーロ(約6億6000万円)が投入され、修復されたが、まだ1万冊以上の修復が必要だという。電子データの形での保存も進められており、完全な修復までには後7、8年はかかる見通し。
一方、同図書館では火災による悲しい知らせばかりではなく、嬉しい知らせもある。昨年には、バッハの手書き譜としては最古のものが修復中に発見された。見つかったのは、バッハが当時13歳だった時にディートリヒ・ブクステフーデの作品を写したものと、15歳の時にヤン・アダム・ラインケンのオルガン曲を筆写したものの2点。バッハは修行時代、ブクステフーデの演奏を聞くために300キロ以上歩いたことが伝えられているが、15歳の時の写譜からは雨に濡れた跡も確認され、楽譜を抱えての移動中に雨にあたった跡ではないかと注目を集めるなどした。