世界のさまざまな教会やキリスト教団体の代表者からなる「グローバル・クリスチャン・フォーラム(GCF)」は、2日から3日間にわたって、「差別・迫害・殉教:共にキリストに従う」をテーマに、アルバニアの首都ティラナで国際会議を開催し、4日、145人の参加者が会議メッセージを発表した(本紙による全訳は下記を参照)。
GCFは、教皇庁キリスト教一致推進評議会、ペンテコステ世界親交会、世界教会協議会(WCC)、世界福音同盟(WEA)など、世界のさまざまなキリスト教会やキリスト教団体の代表者が対等な立場で相互の尊重を育み、一緒に共通の課題に取り組む運動。事務局はフランスのストラスブールにあり、ラリー・ミラー牧師・博士が常勤で幹事を務めている。今回の会議もそれらの団体の支持を得て、GCFの主導によって行われたもの。
「世界のキリスト教指導者たちによる歴史的な会議、キリスト教徒に対する迫害に対する憂慮の増大に対する取り組みを教会と各国政府に要求」という見出しの記者発表資料で、GCFは7日、「世界中のキリスト教共同体に対して激化しつつある『差別、迫害と殉教』に焦点を当てようと、56カ国から呼び寄せられた教会指導者たちの歴史的な会議は、世界の諸教会に対し、自らの信仰のために迫害に苦しんでいる人たちのために祈り、支援をし、連帯するよう呼び掛けた」と説明している。
同指導者らは二面対応で、教会が「歴史においてお互いや他の宗教共同体を迫害して」しまった時のことを悔い改めるとともに、21世紀における差別や迫害、そして殉教を前にして、「全てのキリスト教徒の連帯を緊急に強化するよう」諸教会に強く求めた。
この会議はまた、「基本的人権として全ての人々の信教の自由を尊重し守るよう」各国政府に呼び掛けた。
同会議が公表したメッセージで、参加者たちは次のことを呼び掛けた。
1. キリスト教徒が差別され迫害されている人たちのために祈ること。
2. 国際地域、全国、そして地域レベルにある全ての伝統のキリスト教団体が、迫害されている人たちのために学び、祈り、そして共に働くこと。
3. 諸教会が他の宗教共同体との対話や協力に関与し、差別や迫害に直面しても用心して恐れないこと。
「この歴史的な会議は、世界のキリスト教の各派が共に集まって、差別や迫害そして暴力を体験しているキリスト教徒に耳を傾けて彼らから学ぶものとしては、近現代史上初めてのものだ」と、GCFは説明している。
ローマ教皇フランシスコはこの会議にメッセージを送り、「私は中東やアフリカ、アジアそして世界中のその他のところで増大しつつあるキリスト教徒に対する差別や迫害のことを、大きな悲しみをもって思います」などと述べた。バチカン放送局が4日に伝えた。
GCFによると、同教皇はまた、「世界のさまざまな地域で、キリストに対する証しは、血を流してまでも、カトリック、正教徒、聖公会、プロテスタント、福音派、そしてペンテコステ派の共通した体験となった」と述べたという。
バチカン放送局によると、バチカンから派遣された教皇庁キリスト教一致推進評議会会長のクルト・コッホ枢機卿は、同放送局に対し、「血のエキュメニズム」、すなわちキリストが主であることを、たとえ死に至っても共に証しすることには、教派の違いはないと語った。「キリスト教徒を迫害する人たちはキリスト教徒であれば全く区別しない」と同枢機卿は述べた。
また、同放送局が5日に伝えたところによると、ナイジェリア・メソジスト教会のチブゾ・ラファエル・オポコ監督は、同国東北部におけるイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の反乱は武力だけで終わらせることはできないと述べたという。
「信仰の問題は決して武力や対抗的暴力で止めることはできない」と同監督は語った。「信仰の問題は対話の問題。信仰の問題は洞察や知識を提示する問題であり、国民が啓蒙を受けられるように、国民の教育をもたらす問題だ」
マレーシア教会協議会(CCM)総幹事のハーマン・シャストリ牧師はこの会議で同放送局に対し、「世界中でイスラム意識が高まっており、そしてこれが私たちの国にいるイスラム教徒たちにも影響を及ぼしていて、そのために彼らはイスラム法の強要や『イスラム国』の形成、時にはイスラムにおける過激集団の台頭に関して世界が直面している幾つかの問題と苦闘している。それでこれらのことがみな今や私たちの政治の風景に目立ってきている」と語り、イスラム教徒が60パーセントを占める同国で全人口の約9パーセントであるキリスト教徒が差別の増大を恐れていることを伝えた。
一方、キリスト教徒が直面している暴力について、WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥベイト牧師・博士は、GCFのこの会議が「とても時宜にかなったもの」だとした。同総幹事は、全ての教派のキリスト教徒は「課題が多い時代を生き抜く姉妹兄弟たち」のために働き支えるべく、共に集まる必要があると強調した。
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会議メッセージ
「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです」(Ⅰコリント12:26)
2015年11月4日
1. キリスト教の近現代史上初めて、さまざまな教会の伝統の高位にある指導者たちや代表者たちが、今日の世界において差別され迫害されている教会やキリスト教徒たちに耳を傾け、彼らから学び、そして彼らと共に立つために、共に集まった。
2. 145人のこの世界会議は、2015年11月2日から4日まで、アルバニアのティラナで行われた。同国は1967年に無神論の国家であるとその憲法で宣言され、一部差別が残っているかもしれないとはいえ、今や信教の自由の枠組みの中で盛んな教会がある。
3. 「差別・迫害・殉教:共にキリストに従う」と題するこの会議は、教皇庁キリスト教一致推進評議会(ローマ・カトリック教会)、ペンテコステ世界親交会、世界福音同盟、そして世界教会協議会と共に、グローバル・クリスチャン・フォーラムによって開催された。それはアルバニア独立正教会、アルバニア司教協議会、そしてアルバニア福音同盟の緊密な協力のうちに企画された。
4. 私たちが共に集まったのは、今日の世界においてキリスト教徒や他の宗教者たちの間における差別、迫害、そして殉教が、さまざまな現実と文脈の中における複雑で多様な諸要素のために、増大しつつあるからである。
5. 私たちがキリストに従うにあたって、キリスト教徒はどんな形の迫害や苦しみ、そして殉教にもさらされることがあり得る。なぜならこの罪深い世界が救いの福音に反しているからである。しかしとても早い時代からキリスト教徒たちは、十字架の道を歩むことを通じて復活の希望と現実を体験した。全ての人々の「義に飢え渇く」(マタイ5:6)私たちは、共にキリストに従うのである。
6. 何世紀もの間、教会の生活とは2つの形による不断の証しとなってきた。すなわち、キリストの福音を宣べ伝えることと、殉教者の血を流すことを通じた証しである。21世紀は、苦しみや拷問そして処刑を通じて、キリストに自らを献身したことで罰を受けた忠実な人たちの、感動的な体験談に満ちている。キリスト教徒の殉教者たちは、私たちが想像しがたいような形で私たちを一致させるのである。
7. 私たちは、差別や迫害そして殉教に直面しているキリスト教徒の証しを強めるために、キリスト教会同士の連帯が必要であることを認める。21世紀において、私たちは、この会議からの洞察や見識で達成されたことに引き続いて、全てのキリスト教徒の連帯を強化することが緊急に必要である。
8. 私たちは、歴史において時にお互いや他の宗教共同体を迫害してしまったことを悔い改めるとともに、お互いからの赦(ゆる)しを求め、共にキリストに従う新たな形を求めて祈る。
キリストと共にあって、私たちは次の約束をする。すなわち、
(a)差別され迫害されているキリスト教徒や教会、そして全ての人たちの体験にもっと耳を傾けるとともに、苦しんでいる共同体との自らの関わりを深めること。
(b)教会やキリスト教徒、そして差別や迫害に苦しんでいる全ての人たちのために、また差別をし迫害をしている人たちが変わるように、もっと祈ること。
(c)苦しんでいる人たちに代わって、尊敬と尊厳をもって、共にはっきりとした力強い声で、もっと声を上げること。
(d)癒やしや和解、そして全ての抑圧され迫害されている人たちの信教の自由のために、連帯と支援の効果的な方法を見つけるために、相互理解のうちにもっと行うこと。
9. これらの過酷な現実の中で、試練の時を経ている人たちの体験談に耳を傾け、祈りキリストに従う道を共に見分けつつ、この会議は次のことを呼び掛ける。すなわち、
(a)全てのキリスト教徒が、自らの日々の祈りの中に、もっと目立つ形で、神の国の実現のために差別され迫害され苦しんでいる人たちを含めること。
(b)さまざまな伝統の国際地域や全国そして地域レベルにある全てのキリスト教団体が、それぞれの現場で、迫害されている人たちのために、彼らがよりよい支援を受けられるように、学び、祈り、そして共に働くこと。
(c)全ての教会が、他の宗教共同体との対話と協力にもっと関与するとともに、差別や迫害を前にして、常に用心深く、警戒し、恐れることなく、「蛇のように賢く、鳩のように素直に」(マタイ10:16)なること。
(d)キリスト教徒を差別し抑圧して人権を侵害する全ての迫害者たちが、自らの虐待をやめ、そして命と尊厳に対する全ての人間の権利を肯定すること。
(e)全ての各国政府が、基本的人権として全ての人々の信教の自由を尊重し守ること。各国政府や国際組織に対し、キリスト教徒や他の全ての善意ある人々を尊重し、宗教の名において行われる脅しや暴力から守ること。加えて、私たちは彼らに対し、平和と和解のために働き、現在進行中の紛争の解決を求め、そしてとりわけ人権の侵害者たちに対し、武器の流通を止めることを求める。
(f)全てのメディアは、適切かつ偏りのない形で、キリスト教徒や他の宗教共同体の差別や迫害を含む、信教の自由の侵害について報じること。
(g)全ての教育機関に対し、とりわけ若い人たちに人権や宗教的寛容、記憶の癒やしと過去の敵対関係、そして紛争解決と和解の平和的手段を教える機会や手段を発展させること。
(h)全ての善意ある人々が、貧困と人間の尊厳に対する無礼が暴力を助長している主な要因であることをわきまえつつ、正義、平和そして発展のために働くこと。
10. 私たちはグローバル・クリスチャン・フォーラムがこの催しについての活動を2年以内に評価し、4つの全ての団体の継続のためにそれらに報告するよう勧告する。
ご自身の恵みによって私たちを平等にお創りになった父なる神が、あらゆる形の差別や迫害を克服するための私たちの努力を強めてくださいますように。
神の聖霊が平和と和解を求める全ての人々との連帯のうちに私たちを導いてくださいますように。
全てのものを新しくしてくださる主イエス・キリストが栄光のうちに来られるのを私たちが待ち望む一方で、迫害されている人たちの傷を神が癒やしてくださり、希望をお与えくださいますように。