参院平和安全法制特別委員会で17日午後、安保関連法案が可決されたのを受け、18日は午前から、国会周辺に抗議の声を上げる大勢の人々が押し寄せた。与党は19日未明にも参院本会議で同法案を可決・成立させたい考えで、同法案をめぐる与野党の攻防は最終局面を迎えている。
18日は平日の昼間ということもあり、国会正門前では時折、国会見学に訪れた小学生が記念撮影をするなど穏やかな光景も見られた。一方で、国会前の道路を挟んだ歩道では、多くの警察官が立ち並び、デモの参加者たちが大声で「戦争法案、絶対反対!」などと叫び、物々しい雰囲気だった。
国会正面より少し離れたところに子どもたちの穏やかな笑い声と母親たちの姿があった。若者たちによる「SEALDs(シールズ)」に続き、今年7月に立ち上がった「安保関連法案に反対するママの会」のメンバーたちだ。この日は、同会の神奈川と千葉両県の支部のメンバーたちが中心に集まった。ママの会は、7月26日に東京・渋谷駅前で抗議行動を行ったのをはじめ、国会や各地方議会に署名や嘆願書を提出するなど、全国の「ママ」たちがつながり、各地で「だれの子どももころさせない」を合言葉に、活動を行っている。
今週に入ってから毎日国会前を訪れているという西東京市から来た「ママ」は、特別委員会での可決を受けて、「昨日の国会の様子は、まさにクーデター。明らかなルール違反。こんな姿を子どもたちに何と説明したらよいのか。しかし、私たちは全く負けた気はしていない。むしろ、今夏、全国のママが一つにつながり、学べたことは大きな財産。これからまだまだ、私たちの活動は続いていくのだと思う」と語った。
夕方からは、さらに続々と「ママ」たちが集まってきた。夕方帰宅した「パパ」に子どもを預けて参加したり、夕飯を作ってから家を出たりと、今までサイレントマジョリティーとされていた母親たちが国会前に集まり、しなやかに熱い声を上げた。集会の合間には、参加者が作った焼き菓子でティータイムを設けるなど、交流の時も忘れない。皆が殺気立っているようなデモの現場でも、母親たちはどこか余裕を持っている。「国会前に子どもを連れてママたちが集まる日が来るなんて、思いもしなかった」と語る人もいた。
「平和を実現するキリスト者ネット」(キリスト者平和ネット)もこの日、国会正門前で、他の宗教者らと共に声を上げた。メンバーの一人で、カトリック麹町教会信徒の渡辺多嘉子さんは、「昨日の採決は、とてつもない暴挙。この法案は、明らかに戦争法案。昨日の国会の様子は、民主主義が破壊されていくのを感じた。先の戦争で声を上げられなかった信仰者たち、『日本が戦争に勝ちますように』と祈った教会の無念さを思うと、もう二度と同じ過ちを繰り返してはいけないとあらためて感じる。私たちは、神様を信じる者として、戦後70年間祈ってきたように、これからも日本の平和を祈っていきたい」と語った。
千葉県から駆け付けたクリスチャンの女性(40代)は、自身の母親と共に参加。3人の男の子の母親だと言うこの女性は、「昨日の国会の風景は、忘れられない。法的安定性のないこの法案に賛成するわけにはいかない。子どもたちは、絶対に戦争に行かせない。教会では、この法案についての話はあまり出ないが、どこかおかしいと思っている人はいるようだ。とにかく私たちにできる最大のことは、祈り。これからも祈りつつ、情勢を見守りたい」と話した。
この女性の母親は、国会前の抗議行動に十数回も参加しているという。「最近のデモの特徴は、皆が主体的にこの場に集まって来ているということ。昔は『われわれは・・・』と始まるスピーチが多かったのに対し、最近のSEALDsのスピーチなどを聞いていると『私は・・・』『僕は・・・』で始まるスピーチが多いように思う。時代が少しずつ変わってきているのを感じる。多くの人が政治に関心を持ち、参加するという新しい時代に入ってきたのでは」と話した。
17日に理事会が抗議声明を発表した日本バプテスト連盟では、この日も旗を掲げ、早い時間から抗議を行っていた。恵泉バプテスト教会の信徒3人は、「昨日の採決は、あまりにも乱暴。やり方が安易過ぎるのではないか。このような光景を見るのは、非常に悲しい。人々が衝突をしたり、争ったりする姿を決して神様が望んでいないと思う」と話した。