30カ国語で放送され、世界中で愛されている「きかんしゃトーマス」が、今年で原作出版70周年を迎える。1945年に英国で出版された原作の『汽車のえほん』の作者は、英国国教会のウィルバート・オードリー牧師。オードリー牧師が手掛けた『汽車のえほん』シリーズ26タイトル105話で使用された原画や、テレビシリーズ撮影用のモデル車両、オードリー牧師の貴重な資料などを紹介する展覧会「きかんしゃトーマスとなかまたち」が、18日から東京都現代美術館(江東区)で始まった。
想像上の島、ソドー島を舞台に、青い機関車トーマスや、緑の小さな機関車パーシーなど、人間のように感情を持った個性あふれる仲間たちが活躍する物語。日本でも、広く世代を超えて愛され、「子どもの頃、大好きだった」「自分の子どもたちが今夢中になっている」という人も多いのではないだろうか。
英ハンプシャー州の牧師家庭に生まれたオードリー牧師は、英国の南西部とロンドンを結ぶグレート・ウェスタン鉄道のそばで、鉄道好きな父親の影響を受けて育った。父親と同じく牧師になった彼は、結婚後、息子のクリストファーがはしかにかかって長い間寝込んでいるのを励ますために、古い蒸気機関車の詩を創作して聞かせた。毎日続いたその話が、回を重ねていくごとに子どもたちを魅了していくのを見て、妻のマーガレットは「もっと多くの子どもたちに夢を与えたい」という思いを抱くようになる。彼女の勧めと強い説得によって、1945年に『汽車のえほん』が出版。まさに家族の愛の結晶ともいえる作品だ。
『汽車のえほん』シリーズの絵は、数人の画家たちの手によって描かれ、子どもたちの想像力に大きな影響を与えてきた。今回の展示では、オードリー牧師のシリーズを担当した3組4人の画家たち(レジナルド・ダルビー、ジョン・T・ケニー、ガンバー&ピーター・エドワーズ夫妻)、また息子クリストファーに引き継がれたシリーズを担当した画家クライブ・スポングの計5人が手掛けた挿画約200点が紹介されている。
オードリー牧師のこだわりに応えて、機関車を正確に描写し、繊細で写実的、かつキャラクターたちの生き生きとした表情を描き出している鮮やかな原画は、非常に見応えがある。また、オードリー牧師自身が遺したタイプ・手書き原稿、味わいのある機関車のスケッチや、挿画のイメージを伝えるために工夫されたドローイングなどの貴重な資料からは、興味深い制作過程を知ることができる。
さらに、テレビシリーズや劇場映画でも愛され続けるトーマスの世界を、撮影で実際に使われたモデル車両や、貴重なオリジナル作品の映像などで知ることができる。英国とのゆかりも深い日本の鉄道の歴史資料も展示されており、大人の知的好奇心も十分に満足させられる。また、親子で楽しく鑑賞できる参加体験型の作品も豊富で、トーマスとその仲間たちと一緒に写真を撮ったり、塗り絵を楽しんだりして、トーマスや鉄道の魅力をさまざまな形で体験できるように工夫されている。
いよいよ夏休みが始まるこの季節。暑さに負けそうになった日には、家族そろってトーマスたちに会いに、涼しい美術館へ出掛けてみてはどうだろうか。楽しみながら、親子の絆や家族愛、仲間たちと協力して生きていく友愛や、夢を持つことの大切さを学ぶことができるはずだ。
午前10時~午後6時(7〜9月の金曜日は午後9時まで)開館。入場は閉館の30分前まで。観覧料は、一般1200円、大学生・65歳以上900円、中高生700円、小学生以下無料。10月12日(月祝)まで。