ヨルダンにあるイエスが洗礼者ヨハネから洗礼を受けたと考えられている場所が、ドイツ・ボンで開催された第39回世界遺産委員会(6月28日〜7月8日)で、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産として登録された。
「ヨルダン川対岸のベタニア」ないし、アラビア語で「洗礼」や「浸礼」を意味する「アル・マグタス」という名で知られるその場所は、死海から9キロ北のヨルダン川東岸にあり、ユネスコが発掘を支援し始めて以来、現代の巡礼の地の一つとなった。先々代の教皇ヨハネ・パウロ2世は2000年に、また先代の教皇ベネディクト16世は2009年に訪問している。
世界遺産に登録された「アル・マグタス」には2つのエリアがあり、一つはエリヤの丘、もう一つは川のそばにある洗礼者ヨハネの名を冠した教会群だ。教会や礼拝所、修道院、隠修士の洞穴や洗礼用のプールなど、ローマ帝国時代やビザンツ帝国時代の遺構が残っている。
マタイ、マルコ、ルカ、それぞれの福音書に記されているイエスの洗礼に関する箇所では、神がイエスのことを「わたしの愛する子、わたしの心に適(かな)う者」と表現している。
中東地域の環境遺産保護を目的に活動する団体「エコピース」の代表、ギドン・ブロムバーグ氏は、この地の世界遺産登録のために、ヨルダン政府が敏腕を振ったと語った。イエスが洗礼を受けたというその場所で、自らも洗礼を受けたいと願うキリスト教徒が多く訪れる可能性があり、現在は年間約10万人の巡礼者が訪れているが、世界遺産登録によりその数は急増すると見込まれている。
一方、学者の中には、イスラエルにある他の場所が、イエスが洗礼を受けた場所だと考える者もいる。多くの旅行者はそこもまた訪れている。