カンタベリー大主教が「深い懸念」を示すなか、米国聖公会はその方針を変えず現地時間1日夜に教会法を変更し、聖職者が同性婚の結婚式を執り行えるようにした。
米ユタ州ソルトレークシティーで行われた米国聖公会の総会に参加した代表者たちは、これまで「一人の男性と一人の女性」ないし「夫と妻」とあった結婚の定義を、性的に中立な「カップル」という表現に変える教会法の修正案を圧倒的多数で可決した。
この決定は、米連邦最高裁判所が同性婚を合法化した数日後、また聖公会の最高位の指導者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーが、この流れが聖公会の世界的共同体「アングリカン・コミュニオン」の構成教会に「圧力」を与えるのではないかという懸念を表明してから間もなく行われた。
英国国教会の首位聖職者であるカンタベリー大主教は、英国以外の地域の聖公会に対しては霊的権威だけを持ち、制度上の権限は持っていない。これまでにも、米国聖公会は2003年、同性愛者であり同性のパートナーを持つジーン・ロビンソン主教の按手(あんしゅ)を進める際、当時のカンタベリー大主教であるローワン・ウィリアムズ博士からの強い警告を無視した経緯がある。
聖職者と信徒の代表者による代表会での投票は、主教会が賛成129対反対26の5倍近い大差をつけて結婚の定義の変更を可決した翌日に行われた。事実、同性婚の結婚式を執り行うことを認めず、それを主教たちが守っている英国国教会と違い、米国聖公会の多くの教区では、既に聖職者に対して同性婚の結婚式を執り行うことを認めている。
しかし、約200万人の信徒を抱える米国聖公会の聖職者は、そうした結婚式を執り行わない自由もある。
教会法に関する議案を担当した委員会で委員長を務めたブライアン・ベイカー主教は、「私たちはただ気に掛けるだけではなく、相手のことを知って気を使うことを学びました。そのような相互の気遣いが、私たちの対話の中にはありました。反対する人もいましたし、さらに厳しく反対する人もいました。しかし私たちは祈り、耳を傾け、そして場所を開け、誰も取り残さないということを取り決めたのです」と語った。
このことについて長い間取り組んできたスーザン・ラッセル司祭は、「1976年、教会はLGBT(性的少数者)のメンバーにも全ての面での平等を約束しましたが、現実的な解決を見るまでこれほどの時間がかかりました。今日の動きは、教会が全ての人を完全に迎え入れたという、教会の約束の地へ向かう大きな一歩です」と述べた。
一方、保守派のウェブサイト「スタンド・ファーム」は、棄権、または反対票を投じた米国聖公会の主教のリストを掲載した。保守派の一人で、イリノイ州スプリングフィールド教区のダニエル・マーティンズ主教は自身のブログに、法的には要請があれば応じなければならないが、スプリングフィールド教区内ではこの新しい式の執行を禁じることができるし、禁じるつもりだとつづった。
マーティンズ主教は、「米国聖公会は今日、キリスト教徒がこれまで普遍的で時間を超越した人間の社会的制度だと信じてきた結婚を、実質的に再定義しました。結婚は実は、単に人間の社会的制度であるだけではなく、文字通り有史以前の、創造の業(わざ)に参加することのできる神からの贈り物です。私たち(米国聖公会)は、事前にアングリカン・コミュニオンの他の地域に相談するふりすらしないままこれをしてしまいました。キリスト教界の他の教派などに対しては言うまでもありません。これは絶句させるほどの思い上がりで、著述家オーウェルが書いた全体主義的管理社会をほうふつとさせるような常識の破壊行為です」と厳しく批判した。