イスラム教スンニ派の最高学府であるアズハル大学(エジプト・カイロ)は、過激派組織「イスラム国」(IS)が先月、エチオピア人キリスト教徒28人を虐殺したことを強く非難する声明を発表した。
同大の元学長で大イマム(イスラム教の指導者)であるアフマド・タイイブ氏の名で出された同大の声明は、この虐殺を、「テロリスト集団ダーイシュ(ISの別称)が犯した、全ての宗教、法律、人間の品性に敵対する憎むべき犯罪」だと厳しく糾弾。エチオピアの政府と国民、犠牲者の家族に対し哀悼の意を表した。
殺害されたエチオピア人キリスト教徒28人は、リビア北部に向かっていたところをISに拘束された難民とみられている。ISは、昨年を通じてキリスト教徒を襲撃し、今年2月には、エジプト人コプト教徒21人を殺害する動画をインターネット上に投稿した。
アズハル大学は、ISが拘束していたヨルダン軍パイロットを焼殺した動画を2月に公開した際にも、「臆病な行為であり、ひどく失望した」などと厳しく非難する声明を出していた。
エチオピア人キリスト教徒の殺害については、周囲のイスラム諸国も非難の声を上げている。
リビアのムハンマド・ダイリ外相は、ISによるこの虐殺を「野蛮」だと糾弾。インドネシアの首都ジャカルタで先月行われたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では、2月のコプト教徒殺害を念頭に置いて、「ISがリビアで悲しく残酷な行動を起こしたのは、これが初めてではありません」と述べた。
レバノンのジブラーン・バースィール外相もこの虐殺を非難し、事件の宗教的性質について語った。バースィール外相は、「レバノン外務省は、テロ組織ISが行った虐殺を最も厳しい言葉で糾弾します。彼らはリビアの地において、無実のエチオピア人キリスト教徒28人の血を流しました。犠牲者に罪があったとすれば、ISの極端で偏見に満ちた教えを信じなかったことだけです」と述べ、この「痛みを伴う悲劇」についてエチオピア国民との連帯の意を表した。