人口が密集しているネパールの首都カトマンズやその周辺を、マグニチュード(M)7・9の大地震が襲い、現地メディアの報道によると死者は28日までに4600人を超えた。肌寒い気候の中、屋外で夜を過ごす数万人もの被災者を支援するため、キリスト教系の国際援助団体も現地に急行した。
首都カトマンズと同国第2の都市ポカラで大きな被害が出ており、ネパールではこの80年間で最悪の規模。ロイター通信によると、救助隊が素手でがれきを撤去し、発見された遺体が積み上げられているという。
また、この地震によってエベレスト登山隊のベースキャンプとなる地域に大規模な雪崩が発生し、27日までに、日本人1人を含む少なくとも18人が死亡。雪崩による死者には、米グーグルの幹部ダン・フレディンバーグ氏も含まれている。
隣国のインドでは、主に東部と北部で少なくとも50人が死亡。チベットで17人、バングラデシュでも少なくとも2人が死亡した。
その地域にいた人の話によると、地震発生後数時間が経過した25日午後には、頭部が砕けた複数の遺体や手足を負傷した人々を目の当たりにし、恐ろしい光景だったという。26日未明にはますます状況が悪化した。
カトマンズにあるトリブバン大学付属病院の医師は、遺体が暗い室内に多数積み上げられ、一部は覆いすらかけられていないと話した。顔の半分が滅失し、腹部がフットボールのように膨れた7歳前後とみられる男の子の遺体もあり、死臭が強く漂っているという。
地震による世界遺産への被害も大きい。1832年にネパールの女王によって建てられた約60メートルの高さがあるダラハラ塔は完全に崩壊。ダラハラ塔の展望バルコニーはここ10年間、観光客に開放されており、警察官は報道陣に、多くとも200人ががれきの中に閉じ込められていると話した。
ネパール当局は、人々に屋外にとどまり、倒壊の恐れがある破損した建物に近づかないよう勧告しているが、気温が下がり、数千人が避難所もなく、電気、食料、安全な水が確保できないまま取り残されている。当局はテントを建てたり、学校や公共施設を避難所として使ったりすることを計画しているという。
一方、一部のキリスト教徒が奇跡的に難を逃れた報告もある。
カトマンズにあるチベット人キリスト教徒の交流を支援しているクリスチャン・エイド・ミッションによると、メンバーが教会を出た直後に地震が襲ったという。クリスチャン・エイド・ミッションのアジア地域ディレクターは、「もし地震があと10分早く起きていたら、全員がまだ建物の中にいたでしょう。死者は出なくとも、確実に多くの負傷者が出たでしょう」と語った。クリスチャン・エイド・ミッションは、ネパールで支援している団体に送る緊急支援物資を求めている。
ワールド・ビジョンも、緊急支援のための声明を発表。既に200人のスタッフを現地に送り、仮設の避難所や食料、衛生用品、水、救急医療を提供する準備ができている。
ワールド・ビジョンの現地ディレクターであるフィリップ・エバート氏は、「街の全域でインフラが断絶しています」と報告。「電気は止まり、インターネットの使用はごく限られています。壁や貯水タンクは損傷しています。また、25日には大きな祭りがあったため、寺院や他の公共施設に人々が閉じ込められているという報告も受けています」と現地の状況を伝えた。
サマリタンズ・パースも、現地にスタッフと支援物資を送っている。
コンボイ・オブ・ホープも、支援チームがネパールへ向かっている。コンボイ・オブ・ホープの代表で共同創設者の一人、ハル・ドナルドソン氏は、「ネパールは世界で最も貧しい国の一つで、これほどのマグニチュードの地震に対応できる体制がありません」と説明。「現地の必要は非常に大きいため、私たちは全ての友人に、苦しむ人を助けるよう呼び掛けています」と語った。コンボイ・オブ・ホープのチームは、現地の100以上の教会と諸団体と共に働く計画。
オペレーション・ブレッシングは、現地のパートナー「ネパール・レスキュー・プロジェクト」と共に援助活動を展開しており、独自のスタッフも現地に向かっている。