「彼女は国際的な麻薬犯罪組織にだまされた人身取引の被害者だ」と無実を訴える国際世論と、釈放を求める祈りが強まる中で、麻薬持ち込み容疑でインドネシア最高裁から死刑判決を受けたフィリピンからの出稼ぎ女性メアリー・ジェーン・フィエスタ・ベロソさん(30)。彼女の処刑が28日に行われようとしていると、両国のメディアが伝えている。
フィリピンのテレビ・ラジオ局「TV5」によると、同国内の幾つかのカトリック教会では26日、カトリック信者で6歳と12歳の2人の息子を持つ母子家庭の母親であるベロソさんのために、ミサが行われた。
また、同国のニュースサイト「GMAニュース」は23日、フィリピン・カトリック司教協議会(CBCP)の指導者たちがベロソさんのために祈りをささげたと伝えた。同サイトによると、CBCPとフィリピン福音同盟(PCEC)、およびフィリピン教会協議会(NCCP)からなる「人身取引に反対するフィリピン宗教間運動」(PIMAHT)は15日、ベロソさんのための祈りと釈放を求める声明文を発表していた。
CBCPは12日、インドネシア政府当局に対してベロソさんの命を助けるよう願う国民運動に参加することを公式に決めたと発表。GMAニュースが15日に報じたところによると、CBCPはインドネシア・カトリック司教協議会に対し、ベロソさんの死刑判決を覆すようインドネシア政府に求める書簡を送っていたという。
また、インドネシアにおけるプロテスタントの全国的なエキュメニカル組織であるインドネシア教会共同体(PGI)も21日、ベロソさんに対する同情の意を表す記事を公式サイトに掲載し、判決の取り消しを求めて共に闘うと述べた。さらに、米国長老教会(PCUSA)も26日、インドネシア政府に対して、ベロソさんの処刑をやめるよう求めたと公式サイトで発表した。
ベロソさんの両親や息子たちのみならず、両国の市民運動や国連、そしてインターネット上でも、署名運動などを通じて最後までベロソさんの釈放を求め続ける声が国際的に強まりつつある。一方、ベロソさんは処刑が行われる中部ジャワ州の監獄島ヌサカンバンガン島へ既に移送されている。
インドネシアの主要誌「テンポ」が27日に報じたところによれば、ベロソさんは死刑通知への署名を拒否したという。
一方、フィリピンのインクワイアラー紙(電子版)によると、フィリピンのベニグノ・アキノ大統領は27日、マレーシアの首都クアラルンプールで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議での非公式な会合で、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領と会談し、ベロソさんの件について訴えた。それに対して、ウィドド大統領は「同情的」で、幾つかの法的問題について自国の司法長官と相談してみると語ったという。