日本でも最近、イースターの呼び方で周知されつつある復活祭。イエス・キリストが復活したことを祝う記念日だ。キリスト教会では、復活祭当日だけでなく、それまでの46日間をレント(四旬節)、また特に復活祭前日までの1週間を聖週間、受難週などと呼び、イエス・キリストが受けた苦難を覚える特別な期間として大切にしている。この期間には、教会や教派によって違いはあるものの、さまざまな行事が行われる。「聖木曜日」と呼ばれる復活祭前の木曜日に行われる「洗足式(せんぞくしき)」もその一つだ。
ヨハネによる福音書13章1〜17節には、最後の晩餐の席で、イエス・キリストが弟子たちの足を洗ったと記述されている。イエスはその際、「主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない」と述べており、洗足式はこの記事をもとにした儀式。
東京都太田区にあるカトリック田園調布教会では、毎年、聖木曜日に洗足式が行われている。今年の聖木曜日となる2日、主の晩餐のミサが執り行われ、その中で洗足式が行われた。イエス・キリストが最後の晩餐で足を洗ったのは、12人の男性の弟子たちであったことから、同教会でも事前に12人の洗足希望者を集い、実際に洗足の儀式に臨んだ。
司祭から、イエス・キリストが最後の晩餐で、愛とへりくだりを弟子たちに示したことが話されたあと、祭壇の前に12の椅子が用意され、洗足式が始まった。典礼聖歌402番を「仕えられるためではなく、仕えるためにきた」と賛美する中で、水を注ぐための水差し、たらい、そしてタオルを持った子どもたちと共に、司祭が12人の前にかがんだ。そして、司祭自らが一人ひとりの右足を取り、水差しで水をかけ、足を洗った。
「神の子は仕えるために弟子の足を洗った」ことを体験するこの儀式のあと、司祭から「主に倣って生きられるよう祈りましょう」と呼び掛けがあり、会堂に集った多くの人々が、隣人、平和のために祈りをささげた。
最後の晩餐のあと、イエス・キリストは捕えられ、翌日十字架にかかり殺されることになる。この日の主の晩餐のミサでは、最後に司祭たちが祭壇に向かい祈りをささげたあと、祭壇に敷かれクロス、ろうそく、花など全てのものが取り除かれ、これから十字架にかかるイエス・キリストの受難を表わした。
受難の苦しみを追体験することは、信仰の基礎。形式や方法に違いはあっても、イエス・キリストの受難を信仰者として受け止め、主の復活を心から感謝したい。