プロテスタント教会などが加盟しているフィリピン教会協議会(NCCP)は3月31日、レント(受難節)のアピールとして、麻薬持ち込み容疑でインドネシアの裁判所から死刑を宣告されたメアリー・ジェーン・フィエスタ・ベロソ(Mary Jane Fiesta Veloso)さんの命を救おうと、公式サイトで呼び掛けた。
「彼女は麻薬犯罪組織の被害者であり、彼女がインドネシアに入国したのは、そこで家事手伝いの仕事が待っていると言われたからだ」と、NCCP総幹事のレックス・R・P・レイエス・ジュニア神父が署名したこのアピール文は訴えている。
インドネシアのカトリック教会は、メアリー・ジェーンさんがカトリック信者であるとしている。
「メアリー・ジェーンさんは2人の子どもを持つ母子家庭の母親で、2009年にドバイへ出稼ぎに行った」と、レイエス・ジュニア総幹事は説明した。
同総幹事は、「雇用主が彼女を強姦(ごうかん)しようとしたあと、彼女は一年後に帰国した。2010年4月、彼女はマレーシアで働くようにと違法に採用された。しかしマレーシアに着くと、彼女はそこにはもうその仕事はないと言われた。同じ友人が代わりにインドネシアへ行くよう彼女を説得したが、そこで彼女は逮捕された。彼女はその友人から託された荷物の中にかなりの量のヘロインを入れて運ぶようだまされた。彼女はそれから牢屋に入れられ、インドネシア最高裁判所によって死刑判決を受けた」と続けて説明した。
レイエス・ジュニア総幹事によると、彼女の事件について再審の申し立てが行われたものの、申し立てはその後却下された。インドネシアはいま、銃殺隊によって処刑されるまで、メアリー・ジェーンさんを中部ジャワ州のヌサカンバンガン島にある完全警備の独居房へ移送する準備をしているという。
「このような話を聞くといつも私たちの心は痛む」と同総幹事は記し、1995年に殺人罪容疑をかけられ、えん罪説があったもののシンガポールで死刑にされたフロール・コンテンプラシオンさんという家政婦のことに触れた。
「私たちが2、3週間前にフロール・コンテンプラシオンさんの処刑20周年を記念したのを思う。メアリー・ジェーンさんの事件や死刑囚監房にいる他の海外出稼ぎフィリピン人労働者の話は、人々が他の国々へ出て行った結果である」
また、「一方で、これは故郷にいる家族のより良い暮らしという夢に駆り立てられて移住を余儀なくされたものだ。他方では、移住は国家の開発計画の一部であり、それはその労働者の福祉のためではなく、海外労働者としての彼らの送金のためなのである」と述べた。
さらに、「説明によれば、メアリー・ジェーンさんは自分の弁護のために弁護士をつけてもらえなかったという。彼女は通訳者をつけてもらっただけである。それはフロール・コンテンプラシオンさんに起きたのと同じことである」と、レイエス・ジュニア総幹事は続けている。
同総幹事によると、こうした状況は海外、特に中東でいま死刑囚監房にいる多くのフィリピン人が直面しているのと同じだという。「20年経っても何も変わっていないし、フロール・コンテンプラシオンさんが1995年に死んだ原因を同じ政府が無視していることが、多くの海外出稼ぎフィリピン人が死刑囚監房にいる主な理由なのである」と、同総幹事は主張した。
「従って、私たちは政府に対し、メアリー・ジェーンさんの命を救うために直ちに行動を起こすよう訴える。私たちは移住者である私たちの姉妹兄弟たちの呼び声にこだまし、『私たちは二度とフロール・コンテンプラシオンさんと同じ事件を望まない!』」と、同総幹事は続けた。
また、「彼女の命を直ちに救うためにあらゆることがなされることが至上命題である一方で、長期的には、このような事件がまた起きるのを防ぐ最もよい方法は、この国の国内に十分な仕事を用意することである。全ての人々がちゃんとした生活ができるような仕事である」と語った。
「私たちはまたメアリー・ジェーンさんの事件について、市民や世界中の諸教会に関心をもってもらいたいと思う。共に祈り、インドネシア政府に対し、寛大な処置を求める国連やさまざまな国々の政府の訴えに耳を傾けるよう求めよう」と、レイエス・ジュニア総幹事は訴えた。
「私たちは、メアリー・ジェーンさんは麻薬犯罪組織の被害者であり、処刑されるべきではないと主張する。レントの季節を守り、死に対するキリストの勝利を祝ういま、彼女の側に私たちが共にいて、メアリー・ジェーンさんが、自らの人生におけるこの暗闇に打ち勝つよう望んでいる」と、同総幹事は結んだ。
メアリー・ジェーンさんの支援者たちによるフェイスブックを「いいね!」した人たちは、2日現在で800人を超えている。