米連邦倒産法第11章を申請した米最大のキリスト教書店「ファミリー・クリスチャン・ストアーズ」(FCS)が、当初計画していた再建計画を取り下げた。FCSのチャック・ベンゴチー会長兼CEOはプレスリリースで、「FCSの使命を愛するがゆえにこれ(当初の計画の取り下げ)を行いました」と述べた。
先月、日本の民事再生法に相当する連邦倒産法第11章を申請したFCSは、当初FCSの経営母体となる非営利団体「ファミリー・クリスチャン・ミニストリーズ」(FCM)の新しい下部会社である「ファミリー・クリスチャン・アクイジションズ」(FCA)が、FCSの資産を買い取り、経営再建を行う計画を発表していた。
しかし、FCSの破産申請を受け、キリスト教出版社27社が2千万ドル(約24億円)以上に相当する委託在庫などを理由にFCSを提訴。また、債権者委員会と連邦管財官は、提案された再建計画がFCSの一部のオーナーの利益に資する可能性があるとして意義を唱えていた。こうした中、FCSは18日、FCAがFCSの資産を買い取らないことを発表した。
ベンゴチー会長は、「私たちは、このことが債権者委員会や連邦管財官からの異議に対処する一助となると考えています。この行動によって、私たちが顧客に仕え、神に栄光を帰し続けるために、より早く良い結果を出せるようになるでしょう。FCSの日々の営業は、通常通り継続します」と説明した。
FCSは2012年に3人の実業家により買収され、売り上げを非営利団体のFCMのものとする形態に変更した。しかし、3人のオーナーの1人であるリック・ジャクソン氏は、今回の再建計画において、債務者、留置権者、資産購入者という3つの立場にあり、FCAによるFCSの資産買い取りが偽装ではないかと問題視されていた。
FCMは、FCSの他にキリスト教のオンラインソースサービスを提供する「iDisciple」と、キリスト教の映画製作会社「ギビング・フィルムズ」の2つの会社を所有している。ギビング・フィルムズ初の作品となった映画『90 Minutes in Heaven(天国での90分)』を先月発表した際、ジャクソン氏は「以前の(FCSの)オーナーたちは、経営が傾き始めていたとき、非常に大きな負債を抱えていたため、自分たち自身のことで精一杯で負債を支払うことはできませんでした」と語っていた。
そして、「ですから私たちはそれを背負いました。私たちは楽観的に考え過ぎていました。そして現在のトレンド、人々はレンガとモルタルでできた実店舗よりもオンラインで買うようになったということもあり、売り上げは10~20%減少しました。ボーダーズ(2011年に経営破綻した米第2の書店チェーン)の事例のようなものです」と説明していた。
FCSは銀行から9700万ドル(約114億円)の借入金があり、この負債が連邦倒産法11章の申請へと追い込まれる原因となった。
ジャクソン氏は、「お金はなくなりましたし、そのことについて興味はありません。ですから私たちは、すぐに全ての店舗が営業を停止することになる連邦倒産法第7章(日本の破産法に相当)の適用を選ぶか、FCMが資産を買い取るための新しい組織(FCA)を作り、他の負債を全て支払えるようにするため組織を再編し、前進するための位置取りをする上で、(連邦倒産法11章)363条による売却という形を選ぶかなのです」と説明していた。
FCSは、ミシガン州グランドラピッドに本社を置き、米国内36州に266の店舗を持つ。出店している州の数と店舗数では、ライフウェイ・クリスチャン・ストアの29州185店舗を上回り、米最大。「聖書や書籍、子ども向けの製品、ギフト、音楽など信仰関連の豊富なリソースを提供し、全ての人がイエス・キリストにある信仰を見つけ、成長し、共有し、また祝うお手伝いをすることを目的としています」とうたっている。