昨年5月、富弘美術館(群馬県みどり市)で初披露された「星野富弘さんの詩画をみんなで歌うライブイベント」。その様子はNHKでも紹介され、同9月には渋谷で2回目のコンサートが開催された。これらのイベントで披露された曲が待望のCD化。クリスチャンの詩画作家・星野富弘さんの詩に、5組のアーティストが曲を付けたオムニバスCD『Colors of Tomihiro Hoshino Vol.1』(制作:グロリア・アーツ)が、1月9日に発売された。
参加アーティストには、Migiwa、Samuell、Rainbow Music Japan、大宮香織、TAKEOの5組が含まれ、それぞれのアーティストが、星野さんの詩画の世界を豊かに表現。星野さんの詩を一層味わい深いものにしている。今回は、収録曲の中で「小さな花」を歌ったTAKEOさん、「悲しみの意味」を歌った大宮香織さんの2人にCD制作に対する思いを聞いた。
牧師家庭で育ち、いつも賛美歌を身近に感じていたというTAKEOさん。普段は、教会付属の保育園職員として働く傍ら、1カ月に1回くらいのペースでクリスチャンシンガーとしての音楽活動を行っている。低音から高音まで、山上の空気のように澄んだ歌声は、時に人々を感動させ、時に勇気を与え、時に癒しを与える。そんな魅力的な声の持ち主であるTAKEOさんだが、「大学時代は、自分の声が嫌いでしたね。はやりのシンガーのようにハスキーボイスになりたくて、どうやったら声が潰れるか・・・なんて考えたりもしました」と笑う。
今回、多くの星野さんの作品の中から、この作品を選んだ理由について、「本当にどの作品も素晴らしいので、僕なんかが曲を付けていいのかな・・・と恐縮していたのですが、星野さんの詩画集を読んでいるうちに、この詩に目が留まったんですね。教会のピアノでコードを探っていくうちに自然と曲ができました」と話す。
8曲収録されているこのCDの中で、「十字架」といった言葉が出てくる曲は、TAKEOさんの楽曲「小さな花」だけ。そのことを尋ねてみると、「この曲を聞いて、すぐに情景を思い浮かべられるのは、聖書に触れたことのある方々だと思います。しかし、聖書を読んだことのない方でも、自分の弱さや悩みを全部ご存じで、見放さず、そばにいてくださる大きな存在があることを知っていただければと思っています。不思議とこの8曲には、それぞれがそれぞれの『役目』があるのだと思います。僕の場合は、『十字架の愛』を直接訴えることだったのかもしれませんね。主の御業ですね」と答えた。また、歌詞にあるように、「『どうか私をとくに強くつかんでいてください』と思うことは、今までの人生であったか」と尋ねると、「毎日その連続ですよ」と笑った。
すっと耳に入ってくる高音と、心の中が洗われるような優しげな歌声で、「悲しみの意味」を歌った大宮香織さん。大宮さんは、年に数回、コンサートのため上京。普段は、地元仙台市でピアノの講師として働いている。元々、星野さんの詩に曲をつけて一人で口ずさんでいたという。「自分を励ますために歌っていたので、公表しようとか、アルバムに入れようとか、全く考えていませんでした」と大宮さんは話す。
この詩は、自分の心境を代弁してくれているようにも感じたという大宮さんは、多くの場面で星野さんの詩に慰められてきた。仙台市在住の大宮さんは、2011年、東日本大震災を経験した。幸い、自宅は無事だったものの、仙台市の沿岸部は壊滅的な被害を受け、多くのものを失った。現在でも、大宮さんは仮設住宅などでコンサートを行っている。
「詩や言葉を見ると、急に曲が浮かんでくる」と話し、時々、何気なく目にしたポスターの文言などにも曲が思い浮かぶ時があるという。クリスチャン・ファミリーで育った大宮さんの家庭には、星野さんの作品が、カレンダーや本などを通して常に置いてあった。幼い頃から身近に感じていた多くの作品を、「どれも本当に素晴らしく、私が曲を付けさせていただくのも申し訳ないというか・・・。でも、曲を付けることで、多くの方々に聞いていただいて、何か苦しみや悲しみにあったときの力になれば嬉しい」と話してくれた。
CD『Colors of Tomihiro Hoshino Vol.1』(制作:グロリア・アーツ、発売元:いのちのことば社、協力:ALPHATRAX)の詳しい情報はこちらで。全国のキリスト教書店で販売中。