1月16日にルーテル世界連盟(LWF)の公式サイトに掲載されたルーテル世界情報(LWI)とのインタビュー記事で、ナイジェリアのルーテル派大監督であるネムエル・A・バッバ博士は、「ボコ・ハラムの暴力に対する、より力強い地球規模のキリスト教徒たちの声」と、同国のキリスト教徒とイスラム教徒の「信頼関係の回復を助ける連帯」を強く求めた。ナイジェリア・ルーテル・キリスト教会(LCCN)の会衆は主にナイジェリア北部にいる。
LWI:ナイジェリア北西部の地域社会や教会は、ボコ・ハラムによる暴力の増大でどのような直接的被害を受けていますか?
バッバ博士:まず一つ目に、ナイジェリア・ルーテル・キリスト教会(LCCN)の指導者として、私は、ボコ・ハラムによる村々への暴力的な襲撃の続発で愛する人たちを失ってしまった、北西部にいる何万人もの家族——キリスト教徒、イスラム教徒、そしてその他の信仰者——のことを思います。1月初めに(ナイジェリア北東部)ボルノ州のバガという町で無意味な殺人や、家屋や教会、イスラム礼拝堂、学校、会社が完全に破壊されたことで、あらためてボコ・ハラムの無感覚な本性と、自衛できないナイジェリア市民のどうしようもない状況が表されました。
LCCNは、ボルノ州やヨベ州、そしてここアダマワ州にある他の多くのキリスト教やイスラム教の共同体と同じように、ボコ・ハラムがこの国のこの地域にイスラムの国をつくるために2009年に武力による襲撃を開始して以来、大きな損失を被ってきました。LCCNのアレワ教区とシャル・ホルマ教区は被害が最も深刻です。監督たちは2カ月前に教区本部から出ていかなければなりませんでしたから。立ち退かされた他の何千人もの人たちと同じように、私たちは彼らがいつ帰ることができるのか分かりません。多くのルーテル教会や関係組織は、(ナイジェリア北東部の)ゴムビやアレワの大聖堂も含めて、焼き払われたり略奪されてしまいました。この暴力のために、アレワやシャル・ホルマにいる約5万人の教会員たちは、クリスマスや新年の季節にルーテルの礼拝に集うことがありませんでした。
LWI:教会やキリスト教共同体は、被害を受けた人たちにどう対応しているのですか?
バッバ博士:簡単に言えば、被害を受けた州から来た何万人もの国内避難民(IDPs)がいます。(アダマワ州の)ヌマンにあるLCCN本部で、私たちは約5000人の国内避難民を受け入れており、家族単位の人たちとなるともっと多いです。教会員や他のキリスト教徒たちの多くが、イスラム教徒たちと共に、暴力から逃げている同じナイジェリア人たちに自宅を開放しているのを見て、私は励まされています。私たちの目標は国内避難民のキャンプを設立することではなく、いま欠乏のうちにある人たちを支えるために地方政府と共に活動し、最終的には彼らが故郷に帰るのを助けることです。私たちは地域社会を動員し続けては食べ物や水、衣類を集めていますが、その対応は圧倒的です。政府やイスラム教団体もマットレスや寝具類を提供してくれるなどして、大いに助けてくれています。
LWI:被害を受けた人たちを擁護するために、何かエキュメニカルな、あるいは宗教間の方法を用いていますか?
バッバ博士:「はい」でも「いいえ」でもありますね。「はい」というのは、私たちは信仰共同体として、立ち退かされた人たちが私たちの援助を必要としているものと認識していて、この務めに私たちはみな非常によく応えてきたからです。キリスト教徒として、私たちは、とりわけボコ・ハラムがキリスト教徒を標的とみなしていることを、政府に意識してもらうようにもしました。これはイスラム教徒が襲撃され殺されているのを否定するためではありませんが、キリスト教徒の被害者数が最も多いのです。
なぜ「いいえ」と言うのか? 単純に言って、ボコ・ハラムの意図や影響についてイスラム教徒の兄弟姉妹たちと対話がないからです。この武装集団の存在によって、この共通の敵についての開かれた真摯な会話ができないほどにまで、この国のキリスト教徒とイスラム教徒の間の信頼が侵されてしまったのです。
私たちは家族と国の両方の次元で、痛ましい状況を経験しています。その例が、キリスト教徒とイスラム教徒からなる多くの家族の中の状況です。最近、4人のキリスト教徒の兄弟たちの1人が、イスラム教徒である彼らの姉妹を自宅に迎え入れましたが、彼女とその家族は襲撃を逃れてきたのでした。ところが幾日も経たないうちに、彼は彼女に別の避難所を探すよう求めたのでした。なぜなら彼はキリスト教徒に対する彼女のおおっぴらな批判や軽視に対処できなかったからです。けれども彼女の子どもたちはキリスト教徒の叔父やいとこたちと居残りました。それでは、過激な宗教的理想のために「弟の番人」が文字通り弟を苦しめる人になってしまったそのような関係を、私たちはどうやって癒し回復するのでしょうか?
私たちはイスラム教徒の兄弟姉妹たちの一部をもはや信頼していません。というのも、私たちは彼らがボコ・ハラムを追い払いたいと本気で言っているのかどうか分からないからです。似たような力学は政府や政党、そして軍隊にも見ることができます。敵は同じナイジェリア人であり、この敵と闘い、この多宗教・多民族国家とその家族に信頼を回復することは極めて難しいのです。
LWI:世界のルーテルやキリスト教の共同体はどのようにして連帯を表すことができるでしょうか?
バッバ博士:ナイジェリアのキリスト教徒たちは怒っているのだということを、申し上げておく必要があるかと思います。というのも、ボコ・ハラムの残虐行為によって最も被害を受けているのは私たちなのですから。北東部に住んでいる私たちに向けて、このテロリズムに対して声を大にしている世界中の同じキリスト教徒たちの力強い声が、私たちには十分に大きく聞こえてきません。自らの連帯について大胆になることは、世界中のキリスト教徒たちが学ぶ必要のあることです。ボコ・ハラムのテロリズムをやめさせるための緊急性を維持するために十分なことがなされていないと、私たちは感じています。
ナイジェリアの宗教間対話に対する通常のやり方が、この国の社会的結合に積極的貢献をしているにもかかわらず、今はそれをする時ではありません。私たちは、みんなが自分たちの宗教を守ろうとしながら共存についての会議の文書を発表するところから、一段高いところへ動かなければなりません。私たちはあらためて批判的に見て、キリスト教徒とイスラム教徒のお互いに対する関わり方について真剣に話をし、これらの困難な真実や恐ろしい事実を審議しなければならないのです。これをするために、私たちは世界のキリスト教共同体からの連帯を必要としているのです。
LWI:国際社会は政治的にどのような介入をすることができるのでしょうか?
バッバ博士:私たちはナイジェリアのキリスト教徒として、ボコ・ハラムが行った悪を強調している声が世の中には多くあることを認識しています。でも私たちはまた、この国の過去における内戦の歴史をも知っているのです。投票者たちに拒絶された政治家たちが、武装による反乱を通じてこの国を統治不可能にすることを決めたのです。キリスト教徒として、私たちは平和を促しますが、だからといって私たちは自らの国民が無意味な殺りくで全滅させられるのをただ傍観しているわけにはいきません。私たちはこの国の市民であり、ボコ・ハラムのせいであわてふためいて走り続けることはできないのです。私たちには自らを防衛する権利があるのであって、最悪の事態に追い込まれたとき、平和に代わるものは人口1億7千万人を超える国にとって破滅的でしかありません。
ナイジェリア政府は、その欠点にもかかわらず、この暴力をやめさせようと最善を尽くしていますが、しかしそれには国際社会の励ましと真の支援が必要です。私たちが平和を望んでいる以上、それもとりわけこの国が2月に選挙に入ることから、私たちは国際社会の支援をあらためて強く求めます。私たちはとりわけLWFとルーテル派の共同体全体に対し、私たちのために祈り続けるよう求めます。
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ネムエル・A・バッバ大監督は、主にナイジェリア北部にある9つの教区で教会員数が220万人を超えるLCCNの最高指導者。LCCNは、ナイジェリアにあるLWFの加盟教会の一つで、1961年に加盟した。