今年もあの3月11日を再び迎える。それを前に、東日本大震災で離散した人たちの教訓と進むべき道を調査研究し、昨年、米国で書籍を出版した2人の宣教学者がいる。米オレゴン州ポートランドにあるウェスタン神学校のイノック・ワン博士と、香港キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(CCC)のエルトン・S・L・ロー博士だ。
このウェスタン神学校から出版された書籍『The 2011 Triple Disaster in Japan and the Diaspora: Lessons Learned and Ways Forward(2011年の日本における三重の災害と離散した人たち―学んだ教訓と進むべき道)』には、東日本大震災を機にオアシスチャペル利府キリスト教会によって設立された非営利のボランティアグループである「オアシスライフ・ケア」(宮城県利府町)についての宣教学的な事例研究が含まれている。
第6章にある結論で両博士は、「この本は、3月11日の三重の災害と、個々のクリスチャンや教会による災害後の救援奉仕活動に関する事実のデータを、読者に知らせるために書かれました。それには災害の程度に関する詳細な記述や、災害によって離散した人たちが直面した課題が記されています。それはまた、ある地域の日本人教会が、その災害で離散した人たちへの奉仕にどのようにして関わるようになったかについての民俗誌的な事例研究でもあります」と説明している。
両博士はまた、「この本は日本でより効果的な奉仕をしているクリスチャンの従事者たちを助けるために書かれています」とも述べ、「日本で奉仕をしているクリスチャンの従事者たちを助けるために、日本人の文化や世界観、そして歴史に関する内部関係者の視点から見た情報や洞察がこの本には示されています」と記している。
その上で両博士は、「私たちの願いと祈りは、主がこの本を用いてくださり、日本で奉仕をすることによって大宣教命令を達成しようとする読者の努力において、彼らに知らせ、感銘を与えることです」と述べている。
英語で書かれた同書だが、エルトン・S・L・ロー博士は本紙に対し、日本の読者に伝えたいことを、日本語で次のようにメールで送ってくれた。
私は香港出身ですが、長い間仙台ではたらいていました。仙台は私にとって第二の故郷です。2011年3月11日の震災が起こった時、私は香港にいました。涙を流しながら神様に祈りました。いち早く仙台に戻って震災支援活動に参加したいと願いました。そして、震災後日本の教会を通して、被災地でのボランティア活動に参加させていただきました。
私は被災地の教会から多くの祝福を受けました。教会のボランティア活動を通してあらためて日本の教会を再認識することができたのです。被災地の近くの教会は震災の時に神様の御心を慕い求めました。教会は教派を超え、一つになって、犠牲を払いながら、人々に希望と愛を届けられるようになりました。自分も足りなかったが、教会はわずかしかないものを惜しまずに町の人に分ける姿を見せました。あれはまるで生きるイエス様のようでした。その結果、町の人々は目に見えないイエス様が見えるようになりました。教会は教会らしくいき、町中に光が絶えずに照らすことができるようになりました。
私の祈りは被災地の近くの教会だけではなく、すべての教会も神様から与えられた恵みを生かし、 教会らしくいき、日本を始めとする世界中の人々を照らすことができることです。あれは教会の本来あるべき姿ではないでしょうか。
また、東日本大震災復興支援団体である「オアシスライフ・ケア」の松田牧人代表(オアシスチャペル利府キリスト教会牧師)は、本紙にメールで次のように伝えた。
私たちの小さな働きに目を留め、真摯な態度でリサーチを重ねてくださったエルトン博士に感謝しています。私たちは広い意味で被災者でもあり支援者でもあります。その狭間で葛藤することも多かったのですが、いろいろと話を聞いていただく中で慰めを覚えました。我々が言語化できないことを宣教学的に整理してくださったことは大変ありがたく思っております。