「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界文化遺産登録を見据え、長崎県は今月から、外国人観光客を案内できる通訳ガイドの育成を始めた。神父らを講師にした座学のほか、実際に教会群を巡る実地研修なども行う。
通訳案内士などを対象とした、この「長崎巡礼ガイド育成研修」は、来年1月までの日程で計6回実施。初日13日の研修では、日本二十六聖人記念館長のデ・ルカ・レンゾ神父が日本のキリシタン史について講演した。
6日間の研修申込者総数は68人で、うち28人は長崎県外からの申し込みだという。研修を担当する同県観光振興課は、地元の長崎新聞に対し、予想を大幅に上回る申込数だとし、「外国人は九州全域を回ることも多い。他県の通訳ガイドにも教会群の知識が必要になってきている」と話している。
研修は、20日には3回目として、長崎巡礼センター理事長の中村満神父による座学「カトリックについて」が行われる。来年には、黒崎教会や山田教会、雲仙や島原といった殉教地など、県内の各所を巡る実地研修も行われる。実地研修の講師である長崎巡礼センター事務局長の入口仁志氏は、「これからは旅行業者も世界遺産のテーマでどんどんツアーを組む。特に英語の通訳ガイド育成が急がれる」(同紙)と話す。
長崎の教会群は、日本で現存する最古の教会として国宝に指定されている大浦天主堂など、13の資産で構成されている。長崎におけるキリスト教の伝来と繁栄、また激しい弾圧と250年もの潜伏、そして奇跡の復活という、世界から「東洋の奇跡」と称される歴史の証となる貴重な資産として、世界遺産への登録を目指している。
さらに世界遺産登録という追い風とともに、来年は大浦天主堂で外国人神父と潜伏キリシタンが出会った「信徒発見」から150年を迎える。そのため、巡礼者やメディアなど、海外からの訪問者がさらに増えると見られる。韓国の格安航空会社「ジンエアー」も、こうした需要増を見込み、週3往復だった長崎〜ソウル間の定期便を、今月から毎日1往復に増便するなどしている。
通訳ガイドの需要増加も必至だが、入口氏は「教会群の価値を伝えるにはキリスト教に関する幅広い知識が必要。通訳ガイドは、説明者の言葉を意訳してでも相手に伝える力が重要になる」(同紙)と、キリスト教の知識を持った質の高い通訳ガイドが重要性だと話している。