クリスマスが近づくと、いたる所でクリスマスツリーやリースが飾り付けられるようになる。それと同時に、クリスチャンの家庭では、ネイティビティ(イエス・キリストの誕生の場面を再現した置物)を並べる人々も多くいるのではないだろうか。サンタのモチーフが溢れ、キリスト教とは離れたところでもクリスマスを楽しむ人々が増えた中で、ネイティビティを見ると、イエス・キリストの誕生が事実として視覚的にイメージされるが、もしかしたら日本で今年一番大きいかもしれないネイティビティが、福岡県に作られた。
「キリスト誕生の物語」をテーマにした「あしや砂像展 2014 冬の砂物語」が、芦屋海浜公園レジャープール「アクアシアン」内に設置された特設会場(福岡県芦屋町)で、先月から開催されている。キャッチコピーは「この冬、あなたは『キリスト誕生の物語』を目撃する」。展示された21基の砂像のうち、メインとなるのは「キリスト誕生」と題された作品だ。日本では数少ないプロの砂像彫刻家、茶園勝彦氏によって約3週間かけて制作されたという。幅12メートル、高さ4メートル、奥行き8メートルの壮大なスケールで、イエス・キリスト誕生の場面が再現された。
1995年から2005年まで、「砂浜の美術展」という、砂浜に砂の彫刻を制作展示するイベントを開催していた同町だったが、町の行政改革や砂像制作に関わる人材の問題から休止となっていた。しかし、9年が過ぎた今年、規模を3分の1に縮小して復活。過去の砂像イベントの内容は、すべてリニューアルされ、新たな内容で開かれている。同町は、福岡県でオンリーワンのイベントとして芦屋町の魅力を発信し、イメージアップにつながることを期待しており、今年限りではなく、来年以降も持続可能なイベントにすることを視野に入れている。
砂像は、砂と水だけで作られている。砂だけで制作するため、非常にもろく、常に崩れる可能性がある。これだけ大きな砂像を制作するには、大量の砂と水が使用され、危険を伴う多大な労力が必要だという。砂と水を良く混ぜてしっかりと固めた土台に彫刻を施していくのだが、彫刻家に失敗は許されず、一発勝負で掘り進めていく。それにもかかわらず、完成した彫刻は長く保存できない。わずかな期間しか見られない砂像で、今この時期にぴったりのテーマで作られた作品は、大きな魅力を持っているのではないだろうか。
キリスト誕生の地であるイスラエルは、南部に位置するネゲブ砂漠が国土のかなりの割合を占めている。きらきらと光るイルミネーション、黄金色に輝くオーナメントとはまた違って、砂で描かれるクリスマスがどこかしっくりとなじんで感じられるのはそのせいだろうか。
「あしや砂像展 2014 冬の砂物語」は、12月25日(木)まで開催。詳細・問い合わせは、芦屋町役場地域づくり課商工観光係(電話:093・223・3542、特設ページ)まで。