インターナショナルVIPクラブ主催の「国会クリスマス晩餐会2014」が4日、ホテル・ニューオータニ東京(東京都千代田区)で開催された。クリスチャンの国会議員らと共にイエス・キリストの生誕を祝うという主旨で開かれている同会は、今年で10回目を迎える。記念すべき回ということで、約400人近くの人が集まったが、ここにきて突然の衆議院議員選挙となり、呼び掛け人の国会議員は全員欠席となった。
メインスピーチのスピーカーは、野村ホールディングス株式会社元社長・現常任顧問の氏家純一氏。「The long and winding road」と題して、自身とクリスマスのストーリーを語った。氏家氏とクリスマスの出会いは、幼少期にまで遡る。3歳のとき、フィンランド人宣教師が営む幼稚園に入園し、クリスマスの賛美歌や聖劇に触れた。小学生以降は、YMCAの活動に参加するものの、キリスト教からは遠ざかっていた。
大学卒業後、海外留学をすることになるが、出発の日、「神共にあり、いずこに行くとも勝利あり」と頭の上に手を置いた祖母から発せられた一言が不思議と心に残っていたという。入社後も教会に戻ることはなかったが、欧州・米国での海外勤務で引越しを繰り返していた間、荷物の中には必ず、文語訳・口語訳・英文訳の聖書、賛美歌、コンコルダンスが入っていた。本社勤務になり、取締役、社長とキャリアを積んでいった氏家氏だが、激動の金融界の中で危険を避けるため、24時間警護という精神的にも物理的にも苦しい生活を十数年間強いられることになる。
「我に来よ」という賛美歌を思い出したのは、その時期のことだ。「我に来たれ」と、マタイ11章28~30節の聖書の言葉が、ところどころ頭に浮かんできた。牧師に「これでは、困ったときの神頼みではないのか」と問うたところ、「困ったときに頼めない神など神ではない」と一言。ヨシュア記1章5節の箇所を聖書から示してくれた。かつての祖母の言葉と重なり、「すっかり寄り道をしてきた自分とも、神は共に歩んでくださるに違いない」と確信した。そして、母の胎に戻ったような生まれ変わった気持ちで、1997年のクリスマスに洗礼を受けた。3歳で本当のクリスマスの意味を知ってから、50年後のことだった。まさに「The long and winding road」を歩んできたのだ。
氏家氏は、「みなさんと共に神のひとり子、イエス・キリストの誕生を祝う恵みにあずかっていることが感謝です。クリスマスおめでとうございます」と締めくくった。
集った人々は、音楽や晩餐を楽しみつつ、語らいの時間を持った。演奏を披露する予定だった「ギインズ」(国会議員によるバンド)が欠席となったため、ウクライナ出身のソプラノ歌手オクサーナ・ステパニュックさんが「君は愛されるため生まれた」「O Holy Night」など4曲を披露。「私もクリスチャンです。ウクライナは人口の99%がクリスチャンです。みなさま、素敵なクリスマスを幸せにお過ごしください」と日本語であいさつした。
同会には、各国の駐日大使が参加し、それぞれの国の背景に触れつつ、クリスマスメッセージを送った。
乾杯の音頭を取ったのは、共和国の中で最も歴史が長い国だというサンマリノ共和国の駐日大使マンリオ・カデロ氏。今年同国に日本の神社が建てられたことを挙げ、「欧州でも大変珍しいこと。日本には、さまざまな宗教の寺院・教会があることが不思議だ」と、日本の宗教文化に対し興味深そうにコメントした。
イスラエル国のルツ・カハノフ大使は、「私は日本語は流暢ではないけれど、聖書を原語で読むことができます。聖書に登場するエルサレム、ナザレ、ガリラヤが現実として存在する国を代表して、メリークリスマスをお伝えします。そして、すべての人に平和が訪れることを願い、旧約聖書に200以上も登場する『シャローム』という言葉を贈ります」と語った。
ルワンダ共和国のチャールズ・ムリガンデ大使は、「外務大臣だったころ、数多くの国を訪問しましたが、毎週日曜日には必ず教会の礼拝に出席することにしていました。クリスマスには、ひとり子をこの世に送るという神の究極的な愛が表れています。聖書には、その神を信じる者は、『神の子どもとされる』(ヨハネ1:12)と記されていますが、私たちは同じ父の子どもとして家族であるということを、言葉が通じなくとも感じることができます。みなさんに神の祝福がありますように」と語った。
アンゴラ共和国のジョアン・ミゲル・ヴァヘケニ大使は、「私もみなさんと同じクリスチャンで、牧師になろうとして神学校も出ました。今月で私の日本での任務が終わりますが、日本でもクリスチャンの兄弟姉妹と交わりが持てたという証を国に持ち帰ります」とあいさつした。
タンザニア連合共和国サロメ・シジャオナ大使は、「私はクリスチャンです。天使たちは、『地に平和があるように』と賛美しましたが、現代は平和を保つことに非常に苦労しています。ここに集ったクリスチャンは、平和のために、何かをする必要があります。メリークリスマス」と語った。
ウガンダ共和国大使ベティ・グレース・アケチ=オクロ大使は、「ありがとうと言いたいです。その相手は、イエス・キリストです。この日を迎えることができない人がいる中で、命の与え主である神様に心から感謝をします。統計では日本のクリスチャン人口は1%ですが、もっと多くの人に福音が述べ伝えられ、多くの魂が勝ち取られることを願います。ウガンダには、殉教者の日というのがあります。王ではなくイエス・キリストを礼拝したことで殺された若者たちがたくさんいましたが、殉教者が増えれば増えるほど信徒は増え、今では国民の84%がクリスチャンです。ますます主に心をささげたクリスチャンになろうと日々励んでいます。日本でも、イエス・キリストの愛が広範囲に広がりますように。クリスマスおめでとうございます」とメッセージを送った。
近年、世界ではこの時期、他の宗教への配慮として「メリークリスマス」に代わり、「ハッピーホリデー」というあいさつがメジャーになりつつあるが、「きよしこの夜」を合唱する一同には、変わることのない「イエス・キリストの誕生」の事実の喜びが溢れていた。
最後に、主催者を代表してインターナショナルVIPクラブ創設者の市村和夫氏があいさつ。「世界のどこに行っても、クリスマスは赤と緑ででき上がっている。イエス・キリストの十字架の血と、復活による永遠の命が現れているようだ」と話し、イエス・キリストの誕生だけでなく、その生涯をもあらためて思い返す言葉で会は閉じた。