非常に人気の高い聖書アプリ「YouVersion」は、最近では700を超える言語で、1000以上の聖書訳を提供している。創設者のボビー・グリューネワルド氏は、この通過点がきっかけとなり、聖書を少数言語に訳するための非常に大きな献身と努力へ注目が集まるだろうと述べた。
米オクラホマ州にある教会「LifeChurch.tv」のイノベーションリーダーで牧師のグリューネワルド氏はクリスチャンポストの取材に対し、「1000の訳を搭載したという通過点を祝う上で私が興奮していることの一つは、多くの人々が、ウィクリフ聖書翻訳協会や他の聖書翻訳団体を含む多くのパートナーが、聖書をアプリで提供可能にするために翻訳に尽力していることに気づいてくれることです」と語った。
「このアプリを始めたときに察知できていなかった、あるいはきちんと理解できていなかったことは、一つの訳を完成させるのに数十年かかることがしばしばあるということでした。場合によっては、人生での働きのすべてを新しい言語への翻訳に費やす人々もいるのです」
「無料で文章がデジタル版で提供できるようにするだけという、私たちのしていることは、これまで多大な支援をしてきてくださった方々によるのです。これは今日でも多くの信者の方には知られていない、甚大な努力だと考えています」とグリューネワルド氏は言う。
同氏はまた、これほど多くの聖書訳が「手のひらの中で」読めるようになったのは前代未聞だとし、「たった数年前ですら、決して可能になるとは思われなかった」ことだとも述べた。
YouVersion は、聖書翻訳者、そしてこれまで協力してきた150を超える出版社、聖書協会、組織と共にこの通過点に達した。
YouVersion に1000番目の訳として搭載されたのは、西アフリカのカメルーンで主として話されているフーディー(Hdi)語に翻訳された初のデジタル版新約聖書「Deftera Lfida Dzratawi」であった。
ウィクリフ聖書翻訳協会は、初めてのフーディー語訳聖書を制作するにあたり、1987年からその言語を学び翻訳するためにカメルーン人と協力してきた。聖書は2013年に出版、頒布された。
「この愛の労苦の実が今や聖書アプリでデジタル版として提供されているのを見ると、その中にカメルーンやナイジェリアにいる約4万5千人のフーディー語を話す人に届く可能性を見いだせて言葉に表せない思いです」と、米ウィクリフ聖書翻訳協会の会長兼CEOであるボブ・クレソン氏は語り、このプロジェクトのパートナーである国際SILとカメルーン聖書翻訳リテラシー協会に感謝を示した。
この聖書アプリの制作者たちは、聖書をある言語に翻訳するとき、中でも特にその言語に初めて翻訳するときには、神が啓示する新たな発見の瞬間があると言う。フーディー語の場合では、本質的には無条件で愛することを意味する動詞”dvu”について考えているときだった。何世紀にもわたって、この単語はフーディー語を使う人には知られているものの、ほとんど使用されておらず、代わりに”dva”という単語が使われていた。YouVersion によると、たとえば男性が妻を愛する(dva)という場合、その愛は条件的であり、妻の有能さや誠実さによるものである。
フーディー語翻訳委員会の一員であるカメルーンの地域の指導者たちが、”dvu”という単語こそが最も神の愛、そして神が人間に人生の中で表してほしいと願っている愛の形を表していることに気づいたとき、全く新しい信仰の在り方に目が開かれたという。
「神が、その無条件の愛の物語を正しくフーディー語に書き直したのです。適切に翻訳され、理解されることで、神の御言葉は人生や地域を変える言い表せないほどの力を持つのです。御言葉は人々の神や女性を含む他の人との関係の持ち方を変え、全く新しい世界観を提供することができるのです」とクレソン氏は言う。
YouVersion は、今ではスマートフォンなど1億5千万を超える端末にダウンロードされており、世界中のどのアプリよりも多い言語で提供されており、全世界のインターネットを使えるクリスチャンの87%が母国語で聖書を読むことができる。カトリック、プロテスタント、正教会だけでなく、メシアニック・ジューや無数の他の教派が採用する聖書訳を提供している。
「私たちは、地の果てまで聖書の約束を届けることを可能にする、聖書翻訳を提供するという自分たちの役割を果たすことにぞくぞくしています」と、この通過点への到達を助けてきた YouVersion のパートナーである聖書翻訳団体の連合組織「全ての民族・全ての国家(Every Tribe Every Nation)」の議長ゲイリー・ネルソン氏は語った。「神の御言葉にある希望から離れて生きる人がこの地球上からいなくなる日がくるために、強力なチームと技術が一つになることで、どれほどのことが可能になるかを示す素晴らしいビジョンです」と言う。
1380年に初めての手書きの英語訳聖書が出版されてから長い年月が経過した。「ここ数年の技術によって、これまで訳されたことのない言語を翻訳するためにかかる時間は数十年から数年へと飛躍的に減少しました。あと2週間で訳が完成し、私たちが奉仕している村の人々が携帯電話で聖書にアクセスできるようになるのです。なんという祝福でしょう」と、特にあまり知られていない少数言語について研究、解明、記録をするキリスト教系非営利団体である国際SILのロイス・ガーリー氏は語った。
700以上の言語の1000を超える訳という堂々たる通過点にもかかわらず、YouVersion とそのパートナーはまだ十分すべきことはあると語る。世界中の6901の言語のうち、まだ幾千もの言語が翻訳の完了、あるいは開始を待っているのだ。