【モスクワ=ENI・CJC】正教会がロシアの公的部門、特に教育部門での影響を発揮し過ぎる、と科学アカデミー会員10人が7月に声を上げ、正教会との対立が際立っている中、ウラジミール・プーチン大統領は9月20日、自らのサイトで「ロシアは多彩な信仰が存在する国だ」と発言した。「経済的、社会政治的な幸せは、さまざまな宗教の間の関係をどう組み立てるかによる」と言う。
大統領の指摘は、科学アカデミー会員10人から送られて来た書簡を受けてのもの。書簡は国立小学校での正教会教育義務化と大学での神学学位に言及するものだった。「教会の国家機関への進出は明確な憲法違反」と書簡は指摘、「教会は既に軍に影響を与えている。そして、マスメディアは新しい軍備を祝福する宗教儀式を宣伝している。最高指導層が参加する宗教儀式も広く報じられる。これらはすべて国が聖職者の影響を受けていることの例である」と述べている。また学校での進化論授業反対の動きを批判している。
9月13日には、ロシア南部ベルゴロドでの教育改革など国家的プロジェクトに関する政府関係会議で、プーチン大統領は、「憲法は政教分離をうたっている」として、学校に正教会の教義を全面的に導入するには憲法修正が必要だが、まだその時ではない、と語った。
プーチン大統領は旧ソ連時代、秘密情報機関KGBの職員だったが、現在は、教会に通うことが知られている。この5月には、正教会が、ボルシェビキ革命の後に分裂した在外教会との関係修復を図った際に重要な役割を果たした。
正教会の影響増大を懸念する声を上げた学者の中には、ノーベル物理学賞受賞者ジョレス・イワノヴィッチ・アルフェロフ、ヴィタリー・L・ギンツブルクの両氏も名を連ねた。
ロシア正教会の最高指導者アレクシー二世は、手紙を「過去の無神論者プロパガンダの繰り返し」と指摘している。