福音派の牧師であるジョン・パイパー牧師は、先週末のブリタニー・メイナードさんの死に対して悲しみを表明しているクリスチャンの一人である。
メイナードさんは末期脳癌(がん)と診断され、11月1日を自身の尊厳死の日と選んだとして先月上旬に動画で発表、世界中から注目を集めていた。生前に自身の決断について弁護する動画をいくつか発表し、11月1日には全ての友人と家族に別れを告げた最後の動画を投稿した。
「今日は末期の病気に直面する私が、尊厳を持って死ぬために自分で選んだ日です。私から多くのものを奪い取ったこのひどい脳の癌ですが、はるかにもっと奪うことを防ぐことができるのです」
「この世界は素晴らしいところです。旅行は私の最大の教師でした。私の親友や友人たちは与えることを惜しまぬ人たちです。私がこれをタイプしながらも、 自分のベッドのまわりには支えてくれる人たちがいます。世界よ、さようなら。良い力を広めてください。未来へ向けて送り出してください!」
最後の数週間、メイナードさんは米国全域で尊厳死を合法化するための重要な擁護者となり、米国で尊厳死を認める5つの州の1つであるオレゴン州で生涯を閉じた。
トニー・メディロス神父は「私たちはブリタニーを愛している」というフェイスブックページを作り、死に至る日まで、メイナードさんのために祈り励ますように呼び掛ていたが、メイナードさんを「私たち皆にとっての妻であり、娘であり、姉妹である」と表現しながら、彼女の死の報告を受けた悲しみを伝えた。
メディロス神父は、「私たちは彼女のために祈り、愛し、彼女の人生を大切に思ったのですから、今こそ、死のうちにある彼女のために祈りましょう」と述べ、「私たちの全能である父なる神が、彼女の全ての罪をお赦しくださり、御子の御国における神のご臨在のうちに、彼女に安息と平安をお与えくださいますように。そこは、『彼らの目の涙をことごとくぬぐい取ってくださる。もはや死はなく、もはや悲しみも嘆きも労苦もない』(黙示録21:4)場所です。ブリタニーさん、私たちはあなたを愛しています!安らかにお眠りください」と記した。
メイナードさんの選択は、医師の手を借りる自殺ほう助について世界で多くの論争を引き起こした。また彼女は、自殺ほう助の合法化を求める活動をしている「憐れみと選択(Compassion & Choices)」という団体の顔として最後の数週間を過ごした。
カトリックの反中絶団体「プリースト・フォー・ライフ」の代表であるジャネット・モラナさんもメイナードさんの死を受け悲しみを表明。メイナードさんは「希望を捨てた」とし、彼女の行動は米国内で増加している「死の文化」を反映したものだと述べた。
「私たちの懸念は、末期の病を患う人々が彼女の例に続くことを考えるかもしれない、ということです」とモラナさんは言う。「私たちは、神が天に召すときまで、これらの人々が毎日一生懸命生きる勇気を見つけることができるように祈ります。ブリタニーさんの死は、政治的主張のための勝利ではありません。それは、私たちの国に侵入している死の文化によって支持され、絶望によって急がされたゆえに起きた悲劇なのです」と述べた。
ジョン・パイパー牧師は、「ああ、ブリタニーさん、ブリタニーさん。あなたの死の悲しみは、その悲しいメッセージによって増すだけです」とツイッターに投稿した。
パイパー牧師はなぜ自殺ほう助を支持しないかについて説明する長い記事へリンクを付け、聖書から引用し、私たちの体は生も死もキリストに属し、人の痛みを少なくすることができる特権を神が与えてくれた一方で、私たちに命を終える権利は与えていない、と述べている。「私たちの体は私たちの意志によって扱うものではありません。体は神のものです。そして体は神の意志と栄光のために存在するのです」
パイパー牧師は、キリスト教徒として苦しい生涯に耐えながらも、その苦しみを超えた世界を常に見上げていたパウロを例に挙げ、「終わりの時代の私たちの苦しみは意味のないものではない」と指摘。「わたしたちの一時の軽い艱難は、比べものにならないほど重みのある永遠の栄光をもたらしてくれます」(2コリント4:17)というパウロが語った言葉を引用し、「困難は目的のない拷問ではないのです」と語った。
「悲しんでいる配偶者や母と父、兄弟姉妹、息子と娘はただ単に見ているだけではありません。彼らは仕え、大切に思い、愛を与えているのです。確かに、自殺をすれば苦しむ姿を見せることはありません。でもそれは、人に仕えるという特権を彼らから奪うことにもなるのです。死にゆく愛する人を介護するとき、たゆまぬ看護をする中に、激しいほどの献身的な愛の瞬間があり、それはいかなる死とも取引できるものではないのです」