同性愛の問題を巡り、米国聖公会が年内にも分裂状態に陥る可能性が出てきた。米ルイジアナ州ニューオーリンズで20〜25日に行われた米国聖公会主教議会で保守派主教らから、教区単位で同聖公会を離脱し、他国の聖公会に加わることができるように求める提案が出された。保守派の指導者的立場にあるボブ・ダンカン・ピッツバーグ主教は、少なくとも3教区が年内にこの問題についての採決を行い、最大で5つの教区が米国聖公会を離れるであろうと述べた。
この提案について、ローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教は議会で出される前に既に知らされていたとされているが、ランベス宮殿当局者らは、世界的な聖公会組織の広範囲に及ぶ分裂につながる恐れがあるとして、強く反対している。米国聖公会では昨年12月に、バージニア州の11教会が同性愛などの問題を巡り離脱し、保守的なナイジェリア聖公会と提携するなどの動きがあった。しかし、今回の提案では離脱の動きが教区規模にまで及ぶことになる。
保守派からの提案は、6日間にわたる議会の終盤に出された。議会の間、ウィリアムズ大主教は保守派から多数の要望があったにもかかわらず、それに応じることを拒んできたため、保守派内で不満が高まっていたものと見られる。
ダンカン主教は、ウィリアムズ大主教がどんなに犠牲を払って一致を保とうと努力したとしても、カンタベリー大主教としての威厳を弱めるだけだと述べ、「すべてを一致させようとすることは、聖公会にとって、また大主教自身にとって致命的な失敗となりうる」と語った。
一方、複数の教区が離脱を決定した場合、米国聖公会は自由主義派の主教らを新たに任命すると予想されている。また、米国聖公会の保守派にとって離脱は非常に現実味を帯びたものとなっているが、世界各国の聖公会の指導者らは、世界的な共同体としての聖公会の中に、米国聖公会が留まることができるよう妥協策を模索している。