川内(せんだい)原発の安全対策が新規制基準に適合すると原子力規制委員会が判断したことについて、「川内原発の安全を考える市民の会」代表の藤田房二牧師(日本基督教団串木野教会)は、「安全を保障するものではない」として、再稼働回避に向けた祈りと働きを求めている。
藤田牧師は11日、本紙の取材に応じ、「今後、川内原発は『地元住民の同意』が焦点となります。地元の人々も『再稼働にノー』の声をあげ始めています。地元住民、政治にあたる方々が、再稼働回避に向け、それぞれの立場で良心に従い、勇気を持って行動できるよう、どうかお祈りください。また、おひとりおひとりが神に示されて、お働きくださいますよう願っております」と文書で回答した。
原子力規制委員会は10日、鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原子力発電所が新規制基準へ適合していることを確認し、その設置変更を許可した。同委員会の田中俊一委員長は、審査書を了承し、菅義偉官房長官も「川内原発の再稼働を進める」と記者会見で語った。
一方、佐賀新聞の報道によると、「佐賀にて見る時のしるし」(『原発とキリスト教』新教出版社、2011年)の執筆者である野中宏樹牧師(日本バプテスト連盟鳥栖キリスト教会)が共同世話人を務める「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」は先月27日、九州電力に対し、玄海(佐賀県東松浦郡玄海町)、川内両原発の再稼働反対と無期限の運転停止を要請した。同会は他の2団体と共に、5月には「玄海原発・川内原発再稼働に強く反対する要請書」を九州電力の瓜生道明社長に提出している。
藤田牧師が本紙に寄せた文書は次の通り。
原子力規制委員会は、9月10日、川内原発の安全対策を新規制基準に適合すると判断しました。しかしこれも、以前より原子力規制委員会自ら言っているように、安全を保障するものではありません。
多くの専門家に指摘されているように火山の問題も、地震の問題も、そして原発事故が起きた際の避難計画の問題も解決されたわけではありません。特に原子力災害避難計画は、残念ながら、大量の被ばくが前提とされています。30キロ圏内、20万人以上の人が、被ばく後に高放射線量の下、大渋滞の中を避難し、故郷を捨てることを余儀なくされる計画と言えるものです。
福島の事故もまだ収束していません。多くの命が奪われ、子どもたちの健康が損なわれ、被曝しながら、福島原発で事故の処理に当たっておられる多くの方々がおられます。
福島原発事故の大きな犠牲の上、現在日本で原発は、一基も稼働しておりません。また電気も足りており、自然エネルギーはますます増えております。それなのに、なぜ再稼働なのか。
経済を心配する方がおられます。しかし、廃炉費用、核のゴミの何万年にもわたる管理料を考えただけでも、原発が決して経済的なものでないことがわかります。むしろ原発をゼロにすることで、新しく経済が活性化するという先見の明を持つ財界人も多くおられます。また、地元には多額の交付金が落とされますが、人の命や健康を害する原発を補助するお金が、果たして人を幸福に導くでしょうか。
放射能に最も弱いのは、乳児や幼い子どもたちであり、私たち大人は、子どもたちの未来を神から託されている存在です。何を着ようか、何を飲もうか、煩わなくてよい。まず神の国と神の義を求めなさい、と神はおっしゃいました。神は十分に信頼に足る方であります。
今後、川内原発は「地元住民の同意」が焦点となります。地元の人々も「再稼働にノー」の声をあげ始めています。地元住民、政治にあたる方々が、再稼働回避に向け、それぞれの立場で良心に従い、勇気を持って行動できるよう、どうかお祈りください。また、おひとりおひとりが神に示されて、お働き下さいますよう願っております。