イスラム教やキリスト教など10の国際援助団体が22日、「イラクでの恐ろしい災いを止める緊急の呼び掛け」を発表した。英文によるこの呼び掛けには、キリスト教からはカトリック海外開発機関、ルーテル世界連盟、ワールドビジョン・インターナショナル、ACTアライアンス、世界学生キリスト教連盟、イスラム教からはムスリム・エイド、ムスリム・チャリティーズ・フォーラム、イスラミック・ヘルプ、ムスリム・チャリティ・ヘルピング・ザ・ニーディー、そして非宗教系ではヒューマン・リリーフ・ファウンデーション(英国など)の各代表者が署名している。
本紙による呼び掛け文の日本語訳(非公式)は次の通り。
イラクでの恐ろしい災いを止める緊急の呼び掛け
イラク北部及び西部における人道状況は悲惨です。段階的に拡大しつつある暴力や攻撃の結果である、語られることのない少数者集団の災いは、受け入れることはできませんし、国際人権法や人道法の侵害は卑劣です。これは直ちに止めなければなりません。ひどい人権侵害が報告されており、それもとりわけ女性や子どもたちに対して行われており、戦争犯罪や人道に対する犯罪に相当しうるものです。
国際的な信仰に基づく人道・開発団体及びネットワークとして、これまで多くの人たちの殺害をもたらし、何十万人以上の人たちが住処(すみか)を追われ、絶望のまま、そして放浪のうちにおかれた、恐ろしい攻撃の波に、私たちはすっかり衝撃を受けております。私たちはさらに、女性や子どもたちを含む人々を拉致したり人質にとる事件が多いことを憂慮し、悲しんでおります。
私たちは国際連合やアラブ連盟のあらゆるレベルで、国際的な圧力をかけるよう、そして善意ある人々や政府そして機関から、緊急かつ十分にイラクの状況に取り組むよう、要求致します。
今年の始めから、約120万人の人々が暴力や不安の後で住処を追われていると報告されています。地域的な戦闘や立ち退きに伴って、武装集団が広範囲の領域を支配してきました。私たちは、ヤズィーディー教徒やキリスト教徒、トルクメン人やその他の迫害された集団を含む、全ての人々の保護のために即時の行動を訴えています。何十万人もの彼らは命からがら恐怖のうちに逃げてきたのです。これらの少数者たちはこの国のよそ者でも居留外国人でもなく、イラクという起源にしっかりと根を下ろした大切な集団であり、この国のアイデンティティを定め、そして自らの国で正式な市民たる権利を持っているのです。彼らの故郷や彼らの土地、歴史的および文化的な跡は彼らの遺産や生活と結びついているのです。私たちは彼らがさらなる損失や攻撃、強姦(ごうかん)やその他の侵害にさらされることに重大な懸念を持っています。
国際連合安全保障理事会の決議2169号と2170号(※)を認識しつつ、私たちは同理事会と全ての国連加盟国に対し、宗教的な理由に基づく、あるいはそのように枠をはめられた、殺害やその他の形の暴力を防ぐために、そして全てのイラク人と共にヤズィーディー教徒やキリスト教徒、及びその他の少数派集団の基本的生存権や信教・礼拝の自由を守るために、彼らの背景に関わらず、あらゆる可能かつ平和的な措置を取るよう呼び掛けます。
この危機による悪影響を受け、人道支援を必要としている全ての人々は、水や食料及び食料以外の品目をもって、生命を救う支援をもって、遅れることなく連絡がつくようにしなければなりません。暴力に加えて、飢餓や水不足によって、人々はさらなる災いや死ぬ目にさえあう危険のうちにあるのです。
私たちはこの地域の全て人々のための平和と和解そして正義のための永続的な解決策を率先して探求するよう求めます。イラクは分裂しており、政治的・経済的そして社会的に多くの困難な課題に苦しんでいます。この人道危機の永続的な解決をもたらすために、平和と和解は決定的に重要であり、この国の中の対話は最も重要なものです。私たちは、イラクの危機が中東地域の男性・女性・青年そして子どもたちに影響を及ぼしている課題を例示しており、そして従ってそれらに取り組むには人権に根差した包括的で長期的な手法を必要とするものと信じます。
文民の保護は国際社会が優先課題としなければなりません。私たちはイラクの危機に対処するあらゆる関与において、国際法の厳格な適用を求めるとともに、全ての国家に対し、行われるあらゆる措置が国際人権および人道法に確実に適合したものとなるようにすることを求めます。
私たちはこの危機による悪影響を受けている全ての人々を支え人道支援を提供し続けるべく、自らの連帯と責務を誓約します。私たちの関与は、困窮のうちにある難民や全ての国内避難民を対象とする人道上の原則を、差別や不公平なしに、厳格に支持するものです。
この声明は次の人たちによって支持されています。
ACTアライアンス 総幹事 ジョン・ンドゥナ
ムスリム・チャリティーズ・フォーラム 会長 ハニー・エル・バンナ博士(大英帝国勲章受章者)
カトリック海外開発機関 ディレクター クリス・ベイン
イスラミック・ヘルプ 最高経営責任者 サイーフ・アハマド
ムスリム・チャリティ・ヘルピング・ザ・ニーディー ディレクター マル―フ・ピルザダ
ムスリム・エイド 最高経営責任者 ハミド・アザド
ヒューマン・リリーフ・ファウンデーション 会長 ナビール・アル・ラマドハニ博士
ルーテル世界連盟 総幹事 マーティン・ユンゲ牧師
世界学生キリスト教連盟 総幹事 クリスティーン・ハウゼル
ワールドビジョン・インターナショナル 子どもたちのための提言と正義担当副会長 チャールズ・バデノック