朝鮮半島における正義と平和そして和解に関する国際会議
2014年6月19日
2014年6月17日〜19日 シャトー・デ・ボセイ
共同宣言
「正義と信仰と愛と平和を追い求めなさい」(テモテへの手紙二 2章22節、新共同訳)
15カ国から34の教会と関連団体を代表する54人の参加者からなるこの会議の中の幅広いエキュメニカルな共同体の代表者たちに囲まれ包まれて、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の朝鮮基督教徒連盟(KCF)と大韓民国(ROK)の韓国教会協議会(NCCK)は、2014年6月17日から19日まで、スイスのシャトー・デ・ボセイで会合を行った。
この会議に先立ち、「朝鮮半島の平和と再統一そして発展に関するエキュメニカル・フォーラム(EFK※)運営グループ」の会合が2014年6月16日に行われ、私たちはそこからの報告と勧告を受けた。
この会議の間、私たちは昔からの関係を新たにし、新たな友情を育み、交わりの食事を分かち合い、語らい、そして歌った。聖霊降臨祭の精神で分かち合い、私たちは共に礼拝や賛美、聖書研究(NCCKとKCFの代表者たちの指導で)をすることから、また合同聖餐による礼拝で主の晩餐を共に分かち合うことから、霊的な喜びを得て活力を新たにした。
私たちが会合を行う今年は世界教会協議会によって1984年に開催された東山荘会議の30周年記念にあたる。私たちはその会議が世界的なエキュメニカル運動においてもたらした多大な活力と緊迫感について、神に感謝する。それは朝鮮と北東アジア地域のキリスト教指導者たちの一世代が、朝鮮の平和・正義と再統一のための公的な証しと提言活動に積極的に関与するよう鼓舞するものとなった。
東山荘会議の参加者たちは、北と南の公的な教会組織間の直接的な接触を可能にした、エキュメニカルな協力と規律ある関与のための不可欠な枠組みを発展させた。それはこの分断された半島の両半分にいる朝鮮・韓国人と世界中の離散した民族に希望を与え、連帯の行為において彼らに関与するものとなった。
しかしながら、一世代以上後になって、過去に成し遂げたことを祝うだけでは十分ではなくなっている。朝鮮半島とそれを取り巻く地域の社会的・経済的・生態学的・政治的文脈には重大な変化があり、新たな脅威を引き起こしている。私たちは自らが受けた恵みと私たちが学んだ教訓を今日の私たちの諸教会の青年たちと分かち合う責務を負っているが、それは彼らが前途に横たわる新しい課題に向き合おうとするにあたって、彼らを促し助けるためである。
第二次世界大戦中の日本軍の性奴隷制の被害者である吉元玉(キル・ウォンオク)さんの証言は、分断された朝鮮半島に関する私たちの正義と平和の追求を、より幅広い歴史的枠組みの中に置く役目を果たした。私たちは感動し、彼女の証言を賞賛し、これ以上戦争があってはならないと呼び掛ける。彼女たちが求める正義を追求する上で、苦しみを生き延びたその女性たちによる連帯とネットワークづくりの体験談は、力と感銘の源をもたらした。それはまた、戦争中に最も苦しみを受けるのは女性であることがあまりにも多い中で、平和を創る積極的な参加者としての女性の役割を評価し是認することの重要性を私たちに思い起こしてくれた。彼女たちの参加と貢献なしに真の平和は実現できない。38度線の両側にいる女性たちの苦しみの分かち合いには、お互いを励まし合い、新たな活力と熱意をもって平和と再統一の過程に関与する女性の責任を強めるために、彼女たちが出会うことができる建設的な空間が必要である。そのような空間はまた、女性を排除し疎外する家父長制の抑圧的な構造を克服する知恵をももたらす。
2013年10月30日から11月8日まで釜山で開かれたWCCの第10回総会で採択された朝鮮半島の平和と再統一に関する声明文は、朝鮮半島の正義と平和の巡礼に、国際的でエキュメニカルな関与の新しい時代に確固たる基礎を提供するものである。私たちはその声明文に表された韓国と責務、そして朝鮮の平和と再統一の預言者的な展望とエキュメニカルな目的を再確認する。WCCや世界中の諸教会および専門の奉仕団体が伴って支援をすることによって、私たちは北と南の双方の朝鮮の教会とクリスチャンの出会いと協力の新たな過程を心に描く。
私たちは、この会議の間に私たちが体験する恩恵を与えられたような、クリスチャンとしての、また人間としての、お互いの出会いがもつ根本的な重要性を強調する。私たちが共有するクリスチャンとしてのアイデンティティと霊的な資源に基づいた、このような出会いや私たちがはぐくむ関係を通じてこそ、私たちは敵のイメージを解体し、お互いの理解と友好を促進し、分断の政治と悪魔化の心理に挑戦するのを助けることができるのである。私たちは、敵のイメージと分断を恒久化する、メディアで生み出される支配的な嫌悪の言説に対抗するための資源を発展させ続ける。
私たちはさらなるより大きな国際的でエキュメニカルな会議がWCC・CCA(アジアキリスト教協議会)・KCF・NCCKの協働を通じて、朝鮮半島分断70周年にあたる2015年(なるべく8月に)に企画されるのを楽しみにしている。正義と平和・和解と再統一を求める朝鮮の人々と教会に伴うというこのエキュメニカルな責務を強めつつそれに実際的な効果をもたらすために、私たちはこの次の会議でさらに幅広い諸教会や関連組織の仲間が集められるよう望む。この会議には青年と女性、そしてアフリカやラテンアメリカ、そして中東を含む、世界の他の地域からのより幅広い参加を伴うものにするべきであり、また癒しと和解を体験しあるいは必要とする他の文脈からの教訓を分かち合うための機会でなければならない。
一方で、とりわけ2014年7月2日から9日までジュネーブで行われるWCC中央委員会の次の会合を見越して、私たちの会合の間における自らの会話と祈りを伴う討議に基づき、私たちは当協議会の将来の計画との関連における彼らの検討と行動のために次の関心と勧告事項を伝えることとしたい。
私たちは、正義と平和の巡礼をする朝鮮の人々のエキュメニカルな提言活動と同伴のための継続的な調整と支援をもたらすことができるプログラムの組織を設立する可能性をWCCが探究するよう要望する。
私たちは、WCCが世界中の加盟教会に対し、2014年8月10日から始めて、毎年8月15日より前の日曜日を「朝鮮半島の平和的再統一のための祈祷主日」とするよう促すことを勧告する。私たちはWCCに対し、(NCCKとKCFが共同で作成した)朝鮮半島の平和と再統一のための2014年合同祈祷文をWCCの公用語に翻訳し、さらに幅広く広めるためにその合同祈祷文を各地の言語にも翻訳するよう求めつつ、それを今年使うためにWCCの世界的な構成員に送るよう要望する。私たちは自国内でこの合同祈祷文を広め促進する責務を自らと自らの教会及び組織に対して負うとともに、WCCの加盟教会と協力者たちに対し、行動を伴った祈りをするよう求め、この合同祈祷文で強調されている諸問題に取り組むよう求める。私たちはWCCとKCF、そしてNCCKに対し、世界中の諸教会が朝鮮半島の正義と平和の巡礼に伴うのをさらに支えることができるような資料をさらに開発し提案するべくともに活動するよう促す。
私たちはまた、この合同祈祷文とともに、この会議の成果を伝える書簡を加盟教会とエキュメニカルな協力者たちに送るよう提案する。
私たちはまた、朝鮮半島の平和的再統一のために祈る主日との関連で、WCCに対し、北朝鮮と韓国のクリスチャンが参加する、年に一度のエキュメニカルな会合や会議を促進するよう求める。
関係を築き、この半島の現状についての理解を深め、朝鮮半島の平和と再統一のための実際的でエキュメニカルな連帯を強める方法を探究するために、私たちはWCC加盟教会と関連組織に対し、北朝鮮と韓国の双方への訪問を行うよう促す。
私たちは、平和と和解のために必要な条件を確立するための段階として、世界中の教会や関連組織に対し、国連安全保障理事会によって課されているものも含め、DPRKに対するすべての制裁の解除や、朝鮮半島全体における軍事訓練の停止、そしてDPRKに対するすべての敵対的政策の終結を自国の政府に提唱することを要望する。私たちは北朝鮮と韓国の6月15日の共同宣言と10月4日の共同合意の実施が朝鮮半島の平和と和解のための条件を創るのに寄与するものと信じ、両者にそれをするよう促すものである。このような具合に、私たちの関心や勧告事項を伝える書簡を国連事務総長に送るよう求める。
第10回総会の声明文とEFK運営グループの勧告の両方に続いて、私たちは停戦協定を平和条約に替える国際的な運動の必要性を強調する。私たちはWCCの総幹事に対し、この運動への参加を加盟教会に促す手紙を書くよう勧める。私たちはまた加盟教会に対し、関連するアプローチを各自の政府に対して行うよう強く求める。私たちはWCCに対し、朝鮮半島の正義と平和及び和解のためのエキュメニカル運動の構想を追求する上で、関連する幅広い協力者を参加させ、国際社会の中における彼らの影響力を強めるよう促すものである。
私たちはEFKや、平和と再統一そしてエキュメニカルな開発協力に関するその活動におけるより幅広くより力強いエキュメニカルな関与を促したい。
この非常に重大で歴史的な時において、私たちは若者の新しい世代に朝鮮民族の継続的な分断の原因と、この半島と地域の現状についての理解、そして正義と平和・和解と再統一のための展望と情熱を伝えることが急務であることを認識する。
私たちは、WCCに対し、加盟教会と関連する組織及び青年ネットワーク(世界学生キリスト教連盟、世界YWCA、世界YMCA同盟を含む)に対し、朝鮮半島の和解と平和のために働く能力を若者に養わせるために、平和大使プログラムを開発するよう呼びかける。
釜山総会や関連する活動に参加した多くの若者が分断された朝鮮民族の痛みに深い認識と憐れみをもつようになった。私たちは、彼らの多くが2015年の次の会議に招かれるよう望む。私たちは、この催しに参加している教会や組織が青年代表を含めるよう強く勧告する。
世界中の指導者や意思決定者とともに、若者や女性のために、北朝鮮と韓国の両方を訪問する機会を創るべきである。北朝鮮と韓国の若者や女性の会合―もし必要ならば第三国で―を支援する可能性もまたさらに探究するべきである。
私たちは日本政府に対し、軍による性奴隷制(従軍慰安婦)の暴虐を認め、真摯かつ正直な謝罪を示し、被害者に償うための補償的措置を行うよう、強く要求する。
未来の世代のために、力強さや希望の体験談とともに、朝鮮民族の分断の痛みや苦しみに対する歴史的証言を記録し保存する方法を見つけるべきである。
「エルサレムに近づき、都が見えたとき、イエスはその都のために泣いて、言われた。『もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら・・・。しかし今は、それがお前には見えない』」(ルカ19:41〜42、新共同訳)