仏教徒やキリスト教徒などによる平和運動「宗教者九条の和」(東京都渋谷区)は18日、参議院議員会館(東京都千代田区)で「集団的自衛権の行使は戦争です 『集団的自衛権の行使に反対し、いのちと憲法9条を守ろう』宗教者共同アピール 第3次集約集会」を開催した。安倍内閣が近いうちに日本の集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行うとされる中で、宗教者九条の和は、集団的自衛権の行使容認に断固反対する集会アピール(全文は下記参照)を採択した。
アピールは、「私たち宗教者は、安倍政権の戦争参加の決断である集団的自衛権の行使容認をすべての人々と協働し、全力で阻止します。私たち宗教者は、さらなる祈りと行動で、いのちと憲法9条を守り抜きます」と結んでいる。
この集会で高田健氏(許すな!憲法改悪・市民連絡会)は、「集団的自衛権行使と新たな『戦前』」と題して状勢報告を行った。高田氏は、「東アジアで緊張を作り出しているのは安倍さんだ。ここに緊張の原因があるのであって、安倍さんの路線を取り除くほかはない。集団的自衛権の行使をさせず、安倍内閣を倒していく運動を作っていきたい」と語った。
また、主催者挨拶を行った日本キリスト教協議会(NCC)の小橋孝一議長は、安倍政権が集団的自衛権の行使を容認しようとしていることについて、「私たちの目から見れば、日本を取り戻すのではなく日本を破滅に向かわせる行動であるとしか見えない。もう一度戦争をし、二度と立ち直れないほどつぶれてしまうという方向へ何とか舵を切ろうとしている」と批判し、「それは私たちが許すことはできない。何が何でも阻止しなければならないと思う。焦らずに、あきらめずに、執念深くやっていく。それができるのが宗教者だと思っている」と述べた。
この集会では6人の国会議員が挨拶した。ある議員は、「最大の脅威は中国でも北朝鮮でもなく、安倍政権である。安倍首相が集団的自衛権で国民の命と暮らしを守ると言っているが、これは真っ赤なウソだ」と非難した。
日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉一美神父は、「時代はまさに戦前だということを忘れないでください。集団的自衛権(の行使)は自衛隊が戦争するのではなく、我々が戦争するのだということを心に留めなければいけない」と語った。
また、キリスト者平和ネット事務局副代表の村瀬俊夫牧師は、「私の確信は、日本国憲法の平和主義こそ一番の安全保障だから、これに基づく政治をやっていただきたいということ。隣国との友好関係こそ一番の安全保障だ」などと語った。
この集会に先立って、同牧師らは午前11時に内閣府へ126回目の要請行動を行った。宗教者九条の和によると、首相宛の署名数は、累計で10万筆に達しているという。
閉会後、参加者たちは参議院議員会館前で30分間にわたり路上祈念集会を開き、「宗教者は平和を祈り行動します!」などとする呼びかけ文を声に出し、平和のための祈りと安倍政権による集団的自衛権の行使容認に対する批判の声を強めていた。
上記の集会アピールとは別に、宗教者九条の和のホームページにある、昨年11月1日の宗教者共同アピールは、宮城泰年(聖護院門跡門主)、松浦悟郎(日本カトリック正義と平和協議会会長=当時)、小橋孝一議長が呼びかけ人代表となっている。今回の集会で経過報告を行った、宗教者九条の和事務担当者で日本山妙法寺僧侶の武田隆雄上人によると、このアピールには、この第3次集約が行われた17日現在で5654人が賛同し署名しており、同ホームページをクリックした上で、インターネットやファックス、郵送での署名もできる。
今回の集会には、金閣寺・銀閣寺(京都市)の住職で臨済宗相国寺派の有馬頼底管長からメッセージが届けられた。このメッセージで同管長は、「戦争に結びつき、殺戮(りく)を生む集団的自衛権に反対するのは仏教者として当然だ。今こそ、宗教者が勇気を出して声をあげ、暴走する安倍政権に歯止めをかけなければならない」などと記している。
宗教者九条の和は、「九条の会」の趣意を呼びかける呼び掛け人が各宗教者から出そろい、2005年に設立された。5月22日に公開された前回の第2次集約集会の録画に続いて、今回の集会の録画もユーチューブで近日中に公開され、同団体のホームページにも掲載される予定。今後の集会や行動予定など、詳しくは同ホームページを参照。
集団的自衛権の行使は戦争です
「集団的自衛権の行使に反対し、いのちと憲法9条を守ろう」
宗教者共同アピール第3次集約集会
集会アピール私たち宗教者は、安倍晋三内閣の推進する集団的自衛権の行使容認に断固反対します。
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使には、1. 立憲主義に対する挑戦、2. 専守防衛に徹するという日本の基本政策の変更、周辺諸国との関係の不安定化、3. 米国主導の戦争への事実上の参加、という重大な3つの問題が指摘されています。
私たち宗教者は、今日、あらゆるいのちを尊ぶものとして、とくに第3番目の問題について、断固反対の声をあげなければなりません。集団的自衛権の行使が大国の開戦と周辺国の参戦の正当化でしかないことは、戦後の歴史を見れば明らかです。自国が攻撃されているわけでもないのに、ただもっぱら政治的判断によって、殺し殺される戦場に、積極的かつ直接的に若者を参入させようとしていることを、到底許すわけには行きません。
また、5月15日発表の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」報告書は、一方で「平和主義は日本国憲法の基本原則の一つであり、今後ともこれを堅持していかなければならない」としながら、平和的生存権のためには、集団的自衛権の行使、すなわち参戦も必要だとしました。
しかしながら平和的生存権とは、国家の暴力が繰り返される歴史に鑑み、また個々人の基本的人権と生存の維持という観点から、個々人が戦争に参加しない権利の確保を言うのです。ですから、 安保法制懇の見解は理解しがたい矛盾というほかはなく、日本国憲法の理念に許されない曲解を加えたというべきです。
犠牲を伴わない戦争はありません。若者の犠牲の上にある平和的生存権などありえません。加えて、日本国憲法の前文がうたうのは、全世界の国民の平和的生存権であって、自国と自国の利害に一致した国だけのそれでもありません。私たち宗教者が望むのもまた、敵味方の対立のない、絶対普遍の世界平和です。
私たちの平和的生存権は、戦争によって脅かされるのであって、戦争によって守られるものであるはずがありません。 それがたとえ、抑止力と呼ばれる未然の段階であっても、そこから生まれるのは、軍事費という浪費と半永久的に続く恐怖と監視の日々であることを、私たちは知っています。
私たち宗教者は、安倍政権の戦争参加の決断である集団的自衛権の行使容認をすべての人々と協働し、全力で阻止します。私たち宗教者は、さらなる祈りと行動で、いのちと憲法9条を守り抜きます。
2014年6月18日
「集団的自衛権の行使に反対し、いのちと憲法9条を守ろう」
宗教者共同アピール第3次集約集会 参加者一同(参議院議員会館101会議室にて)